ゆるキャラ人気はくまモンとふなっしーだけ?
ちょいと東スポっぽい「煽り」的なタイトルで恐縮だけれど、誤解を避けるために、はじめに、ここから展開する話は、くまモンが実際に税金泥棒になっているのではないし、くまモンが熊本の活性化に大きく貢献しているということは認めるにやぶさかではないことをお断りしておきたい。つまり、くまモン(そして熊本)そのものに罪はない。しかし、結果として、つまり「巡り巡ってくまモンが税金泥棒の片棒を担いでしまうことになっている」というお話を今回は展開して見たい。こんなちょっとひねくれた展開をしようとするのは、「ゆるキャラ」という存在が、きわめてあやしいものに見えるからだ。で、どちらかというと今回は「陰謀史観」的な流れで話をしてみたい(笑)。ゆるキャラの周りにはワルいインチキおじさんがいっぱいたかっている?
ご存知のようにくまモンは大人気だ。昨今のゆるキャラブームのトップランナーをふなっしーと分け合っている状態(もちろん、くまモンのほうが先発だが)。僕の大学でもケータイのストラップやバッグのアクセサリーとしてくまモン(ついでにふなっしーも)をぶら下げている学生たちはものすごく多い。ゆるくないキャラの代表であるミッキーやダッフィーに肉薄する勢いだ。
このくまモンというゆるキャラを利用した地域活性化の成功を見て、地方自治体が一斉にこれに続けとばかり、ゆるキャラを開発し、売りに出しに躍起になっている。目標はゆるキャラグランプリでの優勝だ。
ただし、どうもこれが胡散臭いのだ。この「くまモン、ふなっしーに続け」という動きが、僕には子どもの頃に見た「縁日のくじ引き露店」と同じようなものに見えるのだ。でも、これじゃあわけがわからないので、ちょいと説明を。
縁日の露店に出没した、インチキくじ引き
子どもの頃(60~70年代)、縁日は本当に待ち遠しい催しの一つだった。その時だけは、親が縁日用のスペシャルお小遣い(お駄賃ですね)を与えてくれ(普段の小遣いが20円のところ、この縁日スペシャルは150円だった)、これを1日で消費するのが楽しかったのだ。
そういった子どもたちはたくさんいるわけで、当然、これを狙って露天がズラーッと並んだわけなんだけれど、その中でいちばん胡散臭いのが「くじ引き」だった。
年一回の神社の縁日。そこにもくじ引き露天はやってきた。くじ引きは紙製の箱でできていて、その箱にパーティションが切られ、その上に絵をあしらえたフタがしてあり、それを押し破って中の紙を取り出すという仕組み。フタは強く押すと剥がせるようにパーティションに沿ってぐるっとミシン目が施してある。中の紙には番号が記載されており、その番号と露天商の後ろにずらっと並べられた景品に貼られている番号を照合し、該当するものがもらえる。
景品群の中央には大きな戦艦大和のプラモデルが鎮座していた。プラモデル屋でもイチバン目立つところに陳列される巨大なプラモのそれだ。当然、くじ引きに挑む子どもたちはこれが欲しい。つまり豪快に射幸心を煽るという仕掛けになっていた。しかし現実はキビシイ。そんなものは当たるはずがないわけで、結局、ガムとか、よくても50円程度のプラモがもらえる程度だった。
さて、翌年にもこのくじ引き露天はやって来た。すると……また、例の、戦艦大和が陳列棚のど真ん中に鎮座している。ただし、ちょっと箱が型崩れし、しかも皺が寄っている。そう、これは去年とまったく同じプラモなのだ。いいかえれば一年間、誰も当てることができなかった。まだ幼かった僕は「なんでだろう?」と思ったけれど、特になんの不信感も抱かなかった。
縁日が終わって数日たったときのこと。僕は近所のお金持ちの友達のところに遊びに行った。すると……なんと件のプラモが置いてあるではないか!そのことは箱の皺の形状からすぐにわかった。
「こいつが遂に当てたのか!!」
僕は、思わずその友達に一言
「すっげーっ!当たったんだ!」
ところが、友達は僕に意外な返事をしてきた。しかもちょっと僕をバカにするような上から目線で。
「当たったんじゃないよ。買ったんだ。」
「えっ、これってくじ引きの景品じゃないの?」
「そうだよ。でも、くじじゃあ、こういう値段の高いやつの番号は絶対箱の中に入ってない。アタリはないのさ。まあ、でも、それをオマエみたいな、なーんにも知らないヤツらがいるから、何回もくじ引きにチャレンジするやつがでてくるんだけど」
「え、アタリ、なし?」
「オレがこれを買うことができたのは、箱が古くなったから、新しいアタリと景品を交換する必要があって、安く売ってもらったのさ。1200円」
つまり、何回くじを引いても戦艦大和にはたどり着かない仕組みになっていたのだ。そう、くじ引き露天商は「踊るポンポコリン」の歌詞の中にでてくる「インチキおじさん」だったのだ。(まあ、さすがに現代では露天でもこんなことはやれなくなっているけれど。これは40年以上も前の話。ちなみに「ちびまる子ちゃん」も同じ頃の話。しかもまる子=さくらももこは清水育ち。僕は島田育ち。だから、僕みたいな「痛い子どもたち」が、あの当時の静岡には、そしておそらく日本中にはたくさんいたんじゃないんだろうか)。
くまモンは絶対に当たらないアタリくじ
昔話を長々とさせてもらったが、この話を、くじ引きの絶対に当たらないアタリ=くまモン、くじ引きの露天商=広告代理店、ダマされ続ける僕のような子ども=地方自治体の広報と置き換えると、これからする説明がスッキリと理解できるのではないだろうか。
くまモンは確かに大当たりした。熊本は元気になった。で、地方自治体もこれにあやかろうと同じようにゆるキャラを制作した。ところがくまモン=戦艦大和を売り出しているのは「親切な露天商=地方自治体広報という素人」のフリをした(あるいは地方自治体広報を隠れ蓑にした)広告代理店というインチキおじさん。実はくまモンはプロ中のプロによって制作、広報企画が打たれたもので(小山薫堂+水野学という究極の組み合わせ)、地方の広報程度の技量でやれるような企画ではない。ところが、これを仕掛けたくじ引き露天商インチキおじさん=広告代理店は、子どもたち=地方自治体の広報たちに、くじを引けば=自分のところに広告代理業務、つまりゆるキャラキャンペーンを任せてくれれば、いつかは必ずキミのくじは戦艦大和を引き当てるますよ=くまモンになりますよと煽り、子どもたち=地方自治体広報から縁日用のスペシャルお小遣い=特別予算を巻き上げ続けるのだ。
そして、これに見事に騙され続けているのがゆるキャラグランプリの上位を占めるキャラたちを展開している地方自治体の広報課という子どもたちに他ならない(ゆるキャラグランプリを主催しているのも、もちろんインチキおじさんたちだ。小山薫堂も入っている)。昨年と今年の上位を占めたゆるキャラをよく見てほしい。同じものが七つもランクインしている。しかも、かなりの予算をかけている。その多くは一位を獲得してくまモンになろう=戦艦大和を獲得しようと躍起になり、有り金をはたくどころか、親=県庁や市役所などを説得してスペシャルお駄賃を去年よりも上げさせてしまったのだ。
ちょいと数字を確認してみよう。昨年、ゆるキャラグランプリのベストテンにランクインしたもののうち,七つが今年もランクインしているが、軒並み予算をアップしているのだ。例えばグランプリに輝いたさのまるは昨年度129万。今年は七倍の911万だ。二位の出世大名家康くんの今年度の予算は、なんと6107万。ハンパなかけ方ではない。ちなみに1000万以上の予算を組んだ地方自治体は12、全国のゆるキャラ用予算を合算すると4億7000万に達する。
しかし、残念でした。やっぱりくまモン=戦艦大和は決して当たらない「見せ金」ならぬ「見せ商品」、いや「見せゆるキャラ」。だから、あなたのところのゆるキャラがくまモンのように全国に名を馳せて、ケータイのストラップやバッグのアクセサリーとしてもてはやされることは無い。戦艦大和と、その周りに並べられている景品群はまったく別のシステムで動いている。つまり,あなたの引いているくじは一等のない「空くじ」なのだ。
ムダ金をゆるキャラにつぎ込むことで税金が無駄になる
「くまモンは税金泥棒」という意味がお解りいただけたろうか?つまり、くまモンの意志(そんなもんがあるとしてだが)、熊本県民の意志に関わりなく、くまモンが資本によって利用されることで、結果として地方自治体の金が巻き上げられるということになってしまうのだ。そしてそのゆるキャラにつぎ込まれる地方自治体のお金って、どこから入ってきたの?いうまでもなく税金だ。
恐ろしいのがここからで、いずれ僕がここで示しているような構造がだんだんと明らかになっていくる。つまり、現在の地方自治体がいくらがんばっても、現在のようなやり方ではゆるキャラで地域活性化が不可能なことを。そして、やがて費用対効果がないことに気づいた自治体が、もう広報にスペシャルお駄賃=予算を出さなくなる。でも、それに気づくのが遅ければ、いたずらにカネをつぎ込み続けることになる。つまり血税の垂れ流し状況、公金のインチキおじさんへのプレゼントといった事態が起こるのだ。
だから、残念ながら「くまモンは税金泥棒」ということに結局なってしまうのだ。しつこいようだが、本人(本熊?)の意図とは関わりなく。言い換えれば、くまモンも利用されているということになるのだけれど。
地方の、地方による,地方のためのゆるキャラを!
地方自治体のみなさん。そろそろ広告代理店というインチキくじ引き露天商の姿を見抜いたほうがいいと思うのですが(いまや縁日の露店でもやっていないことなんですが、ギョーカイだと平気でやられているというのが恐ろしい)。そして、くまモンを見て射幸心を煽られるのはやめたほうがいいのではと思うのですが(あっ、ふなっしーの場合は完全に偶然の「まぐれ当たり」なので、絶対に参考にしないでください)。いかがでしょう?
僕は、ゆるキャラで活性化をすること自体が悪いとは思わない。是非、やってほしいと思っている。しかし、今のような「くまモンありき」みたいなやり方をやっている限りは、おそらく活性化に繋がらないと考えている。ゆるキャラグランプリに登場せず、地元だけでウケるゆるキャラで活性化はできないものだろうか。ちなみにこれはゆるキャラではないが、地元だけにウケるこういった文化的象徴を利用し、地域を活性化したツール=メディアとして、群馬には郷土かるたの「上毛かるた」がある(「上毛かるた」がぐんまちゃんなど足下にも及ばないことは,群馬県民なら誰でも知っています)。