新型iPhoneが5G機能の搭載を見送った。これについては中国国内で中華・韓国スマホに後塵を拝することになるのではとの懸念が出ている。
典型的な記事が、これだ。
”5G対応の新型iPhone、アップルは中国市場で取り残される恐れも”
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-11/PXNTI66JIJUO01
でも、これってAppleのこれまでの戦略をよくわかってないんじゃないかな?
Appleは、その戦略にあたっては二つの方向性を採用してきた。
ひとつは、このテクノロジーに将来性があると睨んだ場合には、どこよりも早く導入する姿勢だ。1991年、アップル初のラップトップ・Powerbook100ではキーボードをノッチ側に前進させ、手前をパームレストにしてセンターにトラックボールを配置(後にトラックパッドに変更)、現在のラップトップのスタイルを作り上げた。またフロッピードライブを廃止しUSBとLANポート、CDドライブもどこよりも早く導入している。当初、iMacの大ヒットで大混乱を招いたが後にWi-Fi機能(これも業界初だった)を搭載することで解決した。そしてこれらがテクノロジー、インターフェイスとして普及しているのは言うまでも無いだろう。この場合、アップルは技術普及の牽引役を務めている。
もう一つは、新しい機能に他メーカーがざわついても、それが実際に使いものになるか、あるいは時期的に適切であるかを検討し、最終的に敢えてすぐには後追いしないやり方だ。典型的な戦略は2008年、NetbookというWi-Fi標準装備で既存のPCより小ぶり、ただし性能は低い安価なラップトップが流行したときのことだ。ジョブズは「あんな過渡的なものはクソだ」と無視し追従しなかった。そして、最終的にこの指摘はiPhoneとiPadの出現によってNetbookが消滅することで証明された。またBlu-rayのドライブも時代遅れとして一切採用しなかったが、これはネットベースでのインストール時代の到来を見越してのことだった。
ただし、後追いをしないわけではない。する場合にはインフラの整備を見極め、それらとの整合性を突き詰め、満を持して完全な製品をリリースする。それがiPodやiPhoneだった。iPodについてはアプリケーション・iTunesと連動させ、極めて容易な手順での操作を実現。それがハードディスク(今日ではメモリー)内蔵型の携帯音楽プレイヤーの爆発的普及を可能にした。iPhoneはトラックパッドの技術を援用してマルチタッチコントロールを実現している。iPadも同様で、リリースの時点でインターネットやパソコンとの整合性が高度なレベルで取られていた。ご存じのように、その操作はタッチパネルでスタイラスペンを用いなかった。いいかえれば、これは「後出しジャンケン」のパターン。ただし、万全の体制で最強の手を打ってくる。
今回、アップルの戦略は後者に該当すると判断した。いま5Gに切り換えてもコストが高くつくだけで、実質的には使いモノにならないから無用の長物。たとえば中国が5Gの整備を急いだとしても、モノになるまでにはまだ数年かかる。中郷以外の市場については5Gは明らかに時期尚早。だったら、そんな不要なものはつけず、価格を抑えて中国製や韓国製に押される市場に対抗したほうが賢明。そして、ある程度5Gのインフラが整備され、他メーカーが矢継ぎ早に商品を出している間にじっくりと検討し、リリースする際には完全なソリューションを搭載して市場を席巻する。これまでのやり方に基づけば、アップルはそう判断しているように、僕には思える。
逆に言えばiPhoneXユーザーには今回のリリースは買い控えするのが賢明と言うことでもある。もっともXより以前のユーザーにとってはそろそろ買い換え時期ゆえ、新しい写真機能やバッテリー持ちのよさなどは背中を押す要素に映るだろう。
というわけでiPhoneXユーザーの僕は、今回はパスです。