「お祭り」は「祭り」というネット用語からの援用だが……
さて、本ブログではインターネット上、とりわけ2ちゃんねる上で用いられる用語をヒントに主に言葉を思いついている。前述したように「お祭り」は「祭り」からの引用であるし、「お祭り党」は2ちゃんから出現したと言われる「フラッシュモブ」を下敷きにしている。ならば、本書の立ち位置こそインターネット=ウエッブ2.0(2ちゃんねるをウエッブ2.0とすればの話だが)的ではないかと指摘を受けるかもしれない。だがそうではない。むしろ僕はこう考える。ウエッブ社会とよばれる情報社会で起きている事態が、典型的、理念型的なかたちで現象しているのがインターネット上での出来事、たとえば「炎上」「荒らし」なのだと。つまり名前こそインターネット上の出来事から生じてきたものだが、実はリアル社会=ウエッブ社会で起きていることが、ネット上でも起きただけ。しかも規模が小さいのでイメージしやすかっただけなのだと。言いかえればウエッブ社会で名前を付けられない状態で様々な現象が起きている。それをここでは「お祭り」「お祭り党」と名付けたのだ。ようするに「お祭り」が先にあり、「祭り」が実は後に発生したか、同時に発生した。「お祭り党」が先にあり「フラッシュモブ」が後か同時に発生した。こういう風にインターネットが現代社会=情報社会を変容させるのではなく、現代社会=情報社会が変容し、その象徴的な現象がネット上で発生していると考えた方が、より説明がすっきりするのではないか。少なくともネットで起こっていることと、ネット以外で起こっていることの関係性を踏まえることだけは出来るはずだ。
このように捉えることで、ウエッブ社会の物の見方は俄然変わってくる。つまりウエッブ2.0論やテレビ論の一元論的、オタク的閉鎖性を乗り越えて、テレビとウエッブ2.0を統合した形で扱えるようになる。いや、より厳密に言えばウエッブ社会というより広い文脈で現代を捉えることができるようになるのだ。こういったとらえ方を、ここでは情報社会論的転回と呼ぼう。