(※今回のブログは僕からみなさんへのお年玉。新年会の小ネタとして利用していただければ盛り上がること請け合いのコンテンツです(笑))

ちょっと違った視点からTV視聴率のあり方を考えてみよう

テレビ局の勢力交代が著しい。80年代、飛ぶ鳥を落とす勢いだったフジテレビが凋落し、その一方で、かつてほとんどオマケ扱いをされていたテレ東の進境が著しい。これは、かつてテレ東を除いてキー局では最下位だったテレ朝も同じだ(「限りなく東京12チャンネル(当時のテレ東名)に近い」と揶揄されていた)。その理由として挙げられるのがコンテンツの問題だ。テレ東がその典型で『YOUは何しに日本へ?』『孤独のグルメ』『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』といったヒットを次々と飛ばしている。その一方で、フジテレビにはこれといったコンテンツがない。ま、こんな感じだろう。

確かにこういった指摘は否定できない。ただし、今回はちょっと視点を変えて、全く異なったところからテレビ局の勢力図変化の理由を考えてみたい。しかもきわめてメディア論的に。

突然偏差値が上がった僕の所属する学部

僕の勤めている大学の学部は今年度の入試で突然、偏差値がアップした。つまり応募者が増えた。じゃ、中身=コンテンツが変わったからかと言うと、そうではない。変わったのは看板。僕の所属する現代社会学科は「文学部」の一学科として位置づけられていたのが、これが独立し「社会学部社会学科」となったのだ。つまり形式=フォルムが変わった。こうすると入試の偏差値表で社会学部の欄に掲載されるのだ。つまり、「あの大学、社会学部あったのね」ということになった。教育内容、そして募集定員も変わっていないのだから、理由は恐らくこれくらいしか考えられない。そういえば、FとかBFランクの大学が受験者を増やそうと、必死にその中身=コンテンツの充実に力を入れているけれど、ほとんど功を奏していないという話を聞く。まあ、「なんだかなあ」というか、「そんなもんかな」という感じではある。要は中身=コンテンツではなく形式=フォルム、つまりメディア性によって人気というのは左右されるのだ。

テレビのリモコンに着目する!

で、テレビ局である。ここではあえてコンテンツを一切無視して考えてみたい。
ご自宅にあるTVのリモコンを手に取ってみて欲しい。ボタンレイアウトの基本構成は1.左上に電源ボタン。これは基本右手で操作することが前提とされているから。右上だと、あたりまえの話だが親指を右上に持っていくという作業がひとつ増えて面倒。左上ならリモコンを握った右手親指をいちばん伸ばしたところにあるのでラクなのだ、2.その下にチャンネル選択ボタンをメインの利用用途としたテンキーがある。で、問題はこのテンキーなのだ。

テンキーは左→右で一列目が1、2、3、二列目が4、5、6、三列目が7、8、9、四列目が10/0、11、12となっている。

さて、ご存じのように、キー局のTVの割り当ては以下のようになっている

1=NHK
2=NHKEテレ
4=日テレ
5=テレ朝
6=TBS
7=テレ東
8=フジ

5という究極のポジションをゲットしたテレ朝

この配列、つまりメディアの形式が視聴率とダイレクトに関連しているのではないか?
再び、あなたが手(右手)に取っているリモコンを見てほしい。今、あなたが握っているリモコンで、何も考えずその上に親指をおいたら、どこに行くだろうか?……当然5、つまりテレ朝になる。つまり、テレ朝はリモコンのポータル。これで勝ちである。

親指の扇形の動きにフィットするテレ東=7

そしてリモコン・テンキーの操作は5を中心に展開することになる。このホームポジションで親指に負担なく移動が可能なキーは3と7、そして1である。手のひらはリモコンを握っているので、何気に親指を動かすとそれは90度の扇形で移動する。だから5から下へ移動すれば、そこは7、つまりテレ東になる(テレ東さん、おめでとうございます)。1は指をちょっと左上に伸ばすだけ。(NHKさん、よかったですね)。

横の動きで快適にザッピングできる日テレ=4とTBS=6

じゃ、4=視聴率で三冠の日テレはどうなんだ?6=TBSは?これは5の左右に平行してキーが配置されているので、指の動きとしては移動がラクなことが勝因に繋がっている。

パソコンの日本語キーボードには英語の配列とJIS配列の2つが印字されているが、今どきJIS配列なんて使っている人間がいるんだろうか?でも、よく考えてみて欲しい。英語配列での日本語入力はローマ字。母音以外は原則2ストロークを必要とする。ところがJISは、たとえば二段目を見てもらえばわかるが「たていすかんなにらせ」とあり、1ストロークで入力が完了する。入力数のエコノミーからすればJISが覇権を握ったはずだ。でも、そうはならかった。なぜか?理由は簡単。ひらがなは46あり、これを全て配列するとキーボードの四段を占めることになる。これ、メチャクチャ打ちづらいのである。特に第一段目と四段目の間が遠すぎる。つまり楯の動きがやりづらい。だからローマ字にして上下移動は三段に限定し、より移動が簡単な(というか5本の指を使うので移動の必要がほとんどないんだが)横の動きでこれをまかなうというスタイルが普及したというわけだ。

4=テレ朝と6=TBSは要するに、5がホームポジションゆえ、この「横の御利益」を得たというわけだ。つまり「とりあえずボタンを押すと5。でも、コンテンツがイマイチ。そんな時、とりえずザッピング、さらにはフリッピングする対象として選択されるのが横の動きに対応した両隣の4と6なのだ。とはいっても、その動きは4→5→6、あるいは6→5→4となるので、結局、いちばんお得なポジションにいるのはテレ朝なんだけど。

三段目真ん中という最悪なポジションにあるフジのボタン

さて、件のフジである。フジはアナログからデジタルへの移行に当たって、フジのアイデンティティである8という数字にこだわったのだろうか、地上波でも8となった。しかし、である。リモコンを握るポジションからすると8はとんでもなく不利なポジションだ。8は三段目にある。ホームポジションである5のすぐ下だからアドバンテージがあるようにも思える。だが、それはマチガイ。二段目のホームポジションからすると、親指を伸ばしやすいのは三段目よりも関節を曲げる必要のない一段目なのだ(曲げるより伸ばす方がはるかにラク)。一方、フジは三段目、しかも7=テレ東のように、三段目であっても親指が縦にスムースに移動可能な扇形の流れの中にも入っていない。つまり、わざわざ親指の関節を曲げて「押しに行く」という作業をしなければならないのだ。面倒くさい!

ホームポジションから番外へ

しかし、フジは昔から、つまりアナログ放送の人気のある頃からテンキーの8の位置だったから、この話はおかしいのでは?というツッコミが入りそう。いや、そうではないのだ。この8という位置、実はかつてはホームポジションだったのだ。アナログ放送の頃のリモコン操作の位置は

1=NHK
3=NHKEテレ
4=日テレ
6=TBS
8=フジ
10=テレ朝
12=テレ東

という「四段」構成。しかも下の四段目に10=テレ朝と12=テレ東が来る。そして、現在のホームポジションの5は空きチャンネル(あるいは地方局チャンネル)。それゆえ、リモコンを持つ手のポジションは無意識にこの四段から構成されるテンキーに合わせたかたちになっていた。つまり、リモコンのにぎりは現在より5~10mm程度下にあった。そうなると三段目真ん中にある8のキーは、ほとんどホームポジションと機能していたのだ。一方、その頃、テレ朝は10で、何と四段目。しかも0と10が同じキー割り当てなので、機種によっては一段目の1を押してから、四段目の0を押すなんてややこしいことをやらなければならなかった(ただし関節を曲げる必要はなかったし、扇形の中には収まったので、さほどハンディキャップにはならなかったけれど)。テレ東は最悪で四段目の三列目。一番押しにくいところにあったのだ。ところがデジタル放送移行に伴って、前述したように、この二局はフジよりも手前のボタン、しかも押しやすいところに移行。その結果、テンキーの操作は三段で構成されるようになり、リモコンを握る手のポジションが上昇。フジは最後尾の一番押しにくいボタンという位置に置かれてしまったのだ。
フジテレビさん、変なことにこだわり過ぎた挙げ句、墓穴掘ったんじゃないんですか?残念でした(T-T)

フジテレビの視聴率を上げる方法は

じゃ、この「リモコンインターフェイス理論」からすると、フジテレビはどうすればこの苦境を打開出来るのか。これまた答は簡単だ。空いているボタン=数字のうち、5=のご相伴にあずかるキーに変更すればよいだけの話だ。その数字とは言うまでもなく3だ。現在3は地方局などが利用している(僕の住む神奈川の場合はTVK)。これは例の親指の扇形の動きの中に収まるし、しかも一段目だ。フジテレビさん、さっそくチャンネルを変更しましょう。解決策が判明してよかったですね(もちろん、制度の問題上、そんな簡単には変えられませんが……)。

さて、今回展開した「リモコンインターフェイス理論」に基づくTV視聴率のあり方、みなさんはどのようにお考えでしょうか。もちろん、メディア論的にはメディアは重層決定、つまり様々な要因の合力に基づいて、その普及が決定されるので、これだけが視聴率の原因だなんて決して言っているつもりはありません。ただし、こういったコンテンツの外部、形式、つまりインターフェイスのメディア性、十分に考慮に値することなんじゃないんでしょうか?

最後に、今回のネタは昨日、僕の幼なじみのK.片山くんとT.箕輪くんの高田馬場での新年会の際、三人ででっちあげたもの。なので、繰り返しますが、もし面白かったら、みなさんも新年会でネタとして使ってくださいね!飲み会で出てきたネタは、飲み会に還元したいと思います(笑)

あけましておめでとうございます。