マーケティング・「iDC商法」のご提案

こちらはエー・アール・エー・アイ・エージェンシーです。この度、弊社は業績不振でお悩みのクライアントの企業の皆様に、これを一気に解決する画期的なマーケティング・プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトのすばらしいところは、ほとんど費用をかけずに膨大な広告・宣伝を打つことが出来、それによって企業様の認知度向上とイメージ・アップを図り、業績を一気に上昇させることが可能な点でございます。元々、このアイデアはネット上で最近繰り広げられている「炎上商法」と、8年前に宮崎県で当時県知事であった東国原英夫氏が展開した「地鶏商法」がヒントになっています。ただし、それをさらに発展させたものでございます。ちなみに、本企画のキャッチ・コピーはスマイル・セラピー協会会長のマック赤坂氏の「ネガティブからポジティブへ」を少々アレンジし、「ネガティブを利用して究極のポジティブへ」とさせていただきました。

先ず本商法にはいくつかの条件がございます。

①御社の業績が近年かんばしくないこと。とりわけ、同業の新興ディスカウント商法に押されてジリ貧であること。

②御社の経営が一族経営で、お家騒動が勃発していること。

この二つでございますが、さしあたり②の方はそれが事実でなくても構いません。演出として展開できれば十分でございます。そして、本商法は「お「家」」=iの「ダメージ」=Dを「チャンス」=Cに変える商法ということで、ここでは「iDC商法」と命名いたしました。御社がこの二つに該当するとお考えの場合には、是非、ご検討をいただきたく存じます。


炎上商法と地鶏商法からのインスパイア

以下、その本商法について、ご説明申し上げます。

先ずアイデアの源となりました二つの事項について、関連でご説明させていただきます。

はじめに「炎上商法」(あるいは「炎上マーケティング」)について。
これは、最近かなりあちこちで騒がれているのでご存知の方も多いのではないかと思われますが、念のため、ご説明させていただきます。炎上商法は商品だけでなく売れなくなった芸能人などによく利用されております。一発逆転をねらい、スキャンダラス、あるいは物議的なコメントや写真をブログ等に掲載します。すると、これに反発を抱いたネットユーザーたちが、このサイトに誹謗中傷の嵐を巻き起こすわけです。そして、この「炎上状態」は事件、あるいはメディアの格好のネタになります。それによって、下火の芸能人は再び脚光を浴び、知名度が再認知されたところで、次の宣伝ネタを放り込み、見事、人気者に返り咲くという手法です。

これは、もちろん商品に転じても同様で、本手法をネットだけでなくメディア全体を利用して見事に戦略を成功させたのが二つ目の東国原英夫氏の「地鶏商法」でした。東国原氏は2007年、宮崎県知事に就任しますが、就任早々、鶏インフルエンザという事件に巻き込まれます。畜産県の宮崎では養鶏は一大産業。これに壊滅的なダメージが加えられたのです。ところが、東国原氏。ネガティブであっても宮崎では地鶏が大量生産されていることがメディア的に認知されたことを察すると、なんと、この「鶏インフルエンザ」を利用して地鶏の大キャンペーンを繰り広げました。「宮崎地鶏は安心、おいしい、しかもヘルシー」とみずからパクパクと食べ続けるトップセールスを繰り広げることで、宮崎地鶏の日本ナンバーワンのブランドにまで押し上げてしまったのです(みなさんも、あちこちにある「塚田農場」で宮崎鶏を召し上がっておられませんでしょうか?)。そう、つまり「ネガティブからポジティブ」ではなく「ネガティブこそポジティブに使えば大きな勝機が生まれる」ということですね。

そしてこの時、鶏インフルエンザを東国原氏がどう対応するかで一般報道、そしてワイドショーはこのネタに首っ引きになりました。野村総研の試算によれば鶏インフルエンザ事件の後の二週間での経済効果は160億円に登ったとか。これは、もし地鶏の宣伝のためにテレビ番組や新聞紙面を買い取ったらという試算なのですが、これが実質、というか完全にタダだったのです。メディアが勝手にやってくれたのですから。

ヒューマンドラマをトッピングすることでスペクタクルを生むiDC商法

そして、この二つのアイデアに基づきつつ、さらにこの商法を確実にする方法が、今回ご提案申し上げる「iDC商法」、つまり「お家(i)騒動のダメージ(D)こそ最大のチャンス(C)商法」に他なりません。これには上記二つの商法に「人間ドラマ」というテーマパーク的な演出が加えられることで、さらに高い効果を確実に期待することができます。

より詳細に立ち入りましょう。繰り返しになりますが、以下のようなシチュエーションがあれば、この戦略は一層効果的です。

先ず①最近、会社の業績が望ましくない。旧態依然とした商法がだんだん嫌われている。会員制を大幅にフィーチャーしたために、クローズドなイメージが広がって、なにをやっているのかわからない。その一方で同業種の企業がディスカウント商法とオープンな戦略でどんどんと業績を伸ばしている。つまり、企業としてジリ貧の状況である。

次に②お家騒動ですが、これは御社が一族経営で世襲になっており、現在、初代が会長に退き、変わってご子息が社長業を引き継いでいて、会長と社長の間で経営を巡って対立があり、それがお家騒動になっているという状況であればすばらしい。さらに加えれば、この時、会長(親)が父親で創業者、社長が娘でエリートで辣腕ということであれば理想的です。もし会長が父親で社長が息子であった場合、これはただの経営を巡っての争いというイメージでしかないので、普通のお家騒動とあまり代わるところはなく、あまりオモシロイ話ではありません(ジェンダー的に社長が息子の場合、「息子」よりも「社員」のイメージの方が強調されてしまいます。これはドラマ的にベタであまり関心を引きません)。また会長が母親で、対立する社長が息子と場合だと、これも日本におけるジェンダーバイアスの関係上、息子が「バカ息子」といったイメージが加わり、企業イメージがマイナスになります(かつて某老舗料亭で起きた偽装事件を巡っての記者会見は、その典型と申せましょう)。

ところが会長が父親で社長が娘でエリートとなると話は俄然色めいてまいります。息子ならば「飼い犬に手を噛まれた」という感じにはなりませんが、これが娘だとやはりジェンダーバイアスの関係上「噛まれた」感が強くなるのです(ジェンダー・バイアスはまことに恐ろしいものですが、利用しない手はございません)。つまり「こんなに可愛がってやったのに、裏切られた」という印象が強くなり、これはもうビジネス、さらにお家騒動と言うより、家族内での泥仕合、橋田壽賀子スペシャルみたいな展開となるわけです。それこそ、会長が社長の娘に向かって、記者会見で苦渋の表情で「悪い子どもを作った」なんて公開コメントをすれば、iDC商法は全てのお膳立てが整ったと言うことが出来ましょう。話はスペクタクルの様相を呈してきます。メディアの報道を通して視聴者、つまり消費者=顧客はワクワクしてしまうわけですね。

ちなみに、これは本当の話である必要はどこにもありません。演出でもまったく構わないのです。ポイントはビジネス上の問題と見せかけて、ドロドロ人間ドラマの方をむしろフィーチャーさせてしまうことにあります。こうすると、あまりアタマがよくなくて、ジリ貧で、視聴率や購買数を稼ぐためなら何でもやりかねないメディアが「飛んで火に入る夏の虫」のごとく、いとも容易に飛びつきます。もちろん飛びつくのはビジネス上の騒動ではなく、お家騒動、しかも家族愛とその葛藤を巡る「人間ドラマ」の方です。当然、ワイドショーはこぞって御社のこの騒動を取り上げるはずです。ただし、くどいようですが、もちろんこっちの「人間ドラマ」の方を専ら追いかける展開になるのですが。「それじゃあ、企業イメージが?」と懸念なされるかも知れません。しかし、ご心配なく。これこそがポイントなのです。

この後、今度は思ってもみないことが起こるのです。こちらからお願いしたこともないのに、メディアの側が会社の戦略とか、これからの御社のあり方とか、現在の商品展開とかをパネルや動画を利用して大々的に長時間にわたり説明してくれるのです。もうおわかりですね。これは県知事就任時に東国原氏が採用したのとまったく同じ商法になります。気がつけば、日本中が宮崎のことを知るようになったように、御社の仕組みについて熟知することになるのです。会長と社長が別のプランを提示しているとするならば、これを一般人はどちらが支持するのかなんてことまでメディアは必ずやアンケート調査などで調べてくれるはずです。つまり○通、△報堂、×急エージェンシーなんかに調査を依頼する必要すらないのです。なんて親切な人たちなんでしょう!

もし、本当に親子で抗争を繰り広げていたとしても、それは問題ではありません。会長が固持しようとする旧態依然とした体質に回帰しようと、社長の経営コンサルティングの手腕を十全に発揮したものを採用しようとも、あるいは折衷案であったとしても、それはあまりこの商法とは関係のないことですから。最終的に決着を何らかのかたちでつけていただきさえすればよいのです。こうすることで、ほとんど、というか完全に無料で御社の大々的なキャンペーンを繰り広げることが実質、可能になります。つまり、どの選択肢に落ち着いても、結局、成功は約束されているのです。とにかく大々的な宣伝が組まれたのですから、もう知名度的には何の問題もありません。そして消費者は名前の知れているものに飛びつくものです。

引き際とそのやり方をお間違いにならないように

コツは、ある程度このお家騒動を引き延ばし、御社の認知度を出来るだけ高めることです。ただし、あんまり引っ張りすぎても行けません。今度は飽きられてネガティブからポジティブどころか、ネガティブからネガティブになってしまいますから、適当なところでヤメましょう。また、これだけは守っていただきたいということが、一つだけあります。それは、この騒動が「演出」である場合には、これが演出であることが絶対バレないように箝口令を引いておくこと。また、あらかじめシナリオを考え、会長、社長、役員は役者としてその役柄を最後まで演じきることが至上命題となります。iDC商法最大のリスクは、この商法がバレた時で、その場合には消費者から一斉にそっぽを向かれ、倒産は必至となります。くれぐれも、この辺についてはお気を付けください。それゆえ演技の練習が必要経費ということになります。

そして、最後に必ずやっていただきたいことがあります。それは「手打ち」です。どちらが折れても構いませんが、「和解」というクライマックスが必要です。最後に「親子であること」を証明し、御社が一枚岩となって邁進するすばらしい企業であることを全国に知らしめるため、出来れば二人が抱き合い、手と手を握り会いながら万歳ポーズなどで決めていただきたいのです。こうやって人間ドラマは大団円を迎えるというわけです。メディアをチェックしている消費者は感動、メディアも一儲け、そして御社も失地回復ということで、全てが丸く収まるわけですね。

こうすれば御社の株価は否応なしに急上昇、連日ストップ高は間違いなしですし、日本中の誰もが御社のシステムを熟知するとともに、経営陣の顔が見えるようになる。また抗争に関わった家族は有名人になってしまいます。翻って、それは御社の強靭なブランディング力を構築することになります。粗利もハンパではなくなります。ディスカウント商法で「お値段相応」なものを売っている競合業種など、もはや敵ではありません。

今回のご提案、いかがでしょうか?ご用命はエー・アール・エー・アイ・エージェンシーまで。