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現在、人気を二分しているシェーバー、パナソニック・ラムダッシュES-ST25(左)とブラウン・ウォーターフレックスWF1s(右)。並べてみるとラムダッシュの方が小ぶりであることがよくわかる。値段はともに7,000~8,000円程度と手頃。二つとも価格からは想像できないほどの剃り味を発揮する。時代の変化を感じさせる製品群だ。


今回は男性の必需品、電動シェーバーについて考えてみたい。
現在、電動シェーバーを支配するメーカーは実質的にいくつかに限られている。ブラウン、フィリップス、パナソニック、HITACHIあたりで寡占状態といっていい(IZUMIなどのマイナーなメーカーで頑張っているところもあるが)。
で、ここのところずっと売れ線のトップを走っていたのが、1万円以下の廉価で購入できるパナソニックのラムダッシュES-ST25(実売価格7000円台後半)だった。ところが、この牙城が崩されつつある。ブラウンがほぼ同価格で同機能のウォーターフレックスWF1s(実売価格8000円台前半)をぶつけてきたのだ。で、こちらも匹敵する売り上げを見せている。

さて、このどちらを買うべきか?

僕はこれを訳あって両方とも購入している(実は、ある意味”買い失敗”している)。なので二つを比較しつつ、そのメリット、デメリットを語ることが可能な状況に。この二つ、どちらも似ているし、コストパフォーマンスにも優れ、甲乙つけがたい。しかし、使ってみると、似ているようで根本的に異なるところもあるので、その辺にチェックを入れつつ製品比較を行ってみたい。結論から言うと、僕の場合には二台持ちで正解だった。

ともに「お風呂場剃り」がウリ

先ず装備から。
双方に共通するのは1.充電式だが電源をつけたままでは使用できない点(これについてはAmazonや価格.comでも不満が出ていた。しかし、この批判は間違っている。お風呂場で電源をつないだまま使用して感電されては困るからこういった仕様になっているわけで、このことは両製品ともよくわきまえている)、2.お風呂場剃りができる、3.三枚刃、4.価格がほぼ同じ、5.キワ剃り付き。このうち、もっともウリなのは、低価格であるにもかかわらず2のお風呂場剃りが出来る点だろう。

この「お風呂場剃りができる」というのは、電動シェーバーの市場にとってきわめて大きな意味を持つ。というのも、これって実はブラウンがウリにしてきた機能を事実上否定していると考えていいからだ。その機能とは「アルコール洗浄」。風呂場だったらそんなことしなくても髭剃りした後、お湯で洗い流しておけば十分清潔なんだから。おそらくこの機能を廉価で大々的に売り込んだのはこのラムダッシュで、これが当たって、ブラウンも同様の機能であるウォーターフレックスをぶつけてきたと僕は推測している。つまりブラウンとしてはパナソニックの快進撃にやむにやまれず自らのウリの機能を否定してまでウォーターフレックスを売り込んだのだ(と、僕は勝手に判断している)。


機能については一長一短、ただしともに詰めは甘い

次にそれぞれの違いについてみていこう。まず、概観と機能について。
先ずラムダッシュ。本体は結構コンパクト。同じシリーズの五枚刃のような重厚感はないが、デザイン的には洗練されている。僕が購入したのはレッド(他にブラック、ブルーがある)だが、ガンダムもどきというかガンプラっぽくて、このガジェット感が楽しい。電源はプラグをジャックに刺すのではなく、クレイドルに乗っける形になる。クレイドルの上部両端に接点があり、ここから電力が供給される。ちなみに、これは携帯するのには完全にハンディになる。2~3日の出張ならバッテリーだけで十分使用可能だが、長期にわたる場合には、クレイドル、さらにアダプターを携帯しなければならないからだ。しかもスーツケースに入れるとき、ハッキリ言ってがさばる。だからすごく不便。また専用ケースは付属していないので本体が丸裸だ。その代わりと言ってはなんだが、網場の周辺に透明のプラスチックカバーを装着するようになっている。網場の保護にはまあこれで十分だろう。また、このカバーがスタンドの役割を果たしているのもグッド。ただし、このカバー結構外れやすい。他のお風呂場グッズと一緒に袋に入れると、取り出したときに外れていることがよくある。これは要検討だろう。


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ラムダッシュをカバーを付けて立てかけたところ。なかなか便利。ただし、このケース、外れやすい。こういった「フタ」は「付けやすく外しやすいが、外れにくい」といった難しいニーズに対応しなければならないので、メーカーも大変だ。



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クレイドルに乗せたところ。本体真ん中の両脇、黒い部分に電力を取りこむ接点がある。このクレイドルは持ち運ぶとなったらかなり不便。



一方のウォーターフレックス。さすがドイツ製というか、見た目は堅牢なイメージ。ラムダッシュより一回り大きい。なかなか武骨で、いかにもブラウンといういう印象を受ける。購入したのはブルー(他にブラックとレッド。ラムダッシュと同様のラインナップだ)。電源は本体にプラグを直接刺すタイプ。なので電源を持って移動する分にはラムダッシュよりこちらに分がある。また専用ケースがあるので旅行には便利だ。ただし、このケース、ちょっと設計上の詰めが甘い。布製なので、たとえば出張先の風呂場でシェービングした場合、本体からきれいに水を拭き取って収納しないとケースに染みこむ。で、そんなことを繰り返せば、おそらくケースが汚れたり、臭いを発したりするようになってしまう。また、このケースには電源を収めることが出来ない。じゃあ、ハダカで持っていけばよいということになるのだけれど、そうすると今度は網場用のプラスチックカバーがないので、刃が剥き出しになってしまう(これに関してはレビューで非難囂々だった)。つまり、どうも詰めが甘いのだ。しかもラムダッシュより重くがさばる。以前所有していた同社のFlex Syncroシリーズで使っていた網場用のカバーが残っていたので(これも三枚刃だった)、これを刺してみたらピッタリだったので使っている(写真参照。ということは、この三枚刃はFlex Syncシリーズと同じ?)。


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ブラウン・ウォーターフレックス。キャップはFlex Syncroのもので、実際には添付されていない。これくらいはバンドルすべきだ!


ということで、どっちもどっちという感じではある。1.ラムダッシュのように刃用のカバーが付いていてスタンドになる、2.ウォーターフレックスのように専用ケースが付いている、3.ケースはビニールかプラスチック製で、本体がぬれていても大丈夫、4.ウォーターフレックスのようにアダプターを直付けできる、5.ケースにアダプターを同梱できる、となればベストだろう。これくらいはユーザーインターフェイスを煮詰めて欲しい(Appleがシェーバーを開発したら、これくらいはやるだろう)。

剃り味比較~普段剃りはウォーターフレックス、お風呂場剃りはラムダッシュ

では、肝腎の剃り味はどうだろう。それぞれ1.普通剃り、2.風呂場剃りで検証してみた。ちなみに剃り味というのは本体の性能だけでなく、使用者の髭の状態と皮膚の状態との相性がある。で、僕の場合は「髭が濃い」「剛毛」「皮膚の強さは普通」という状態。だから、髭の細い人に向いているフィリップスのロータリー式などは全く使えない。こういったことを前提にしつつ参考にしていただきたい。

先ずラムダッシュ。スイッチを入れてみると「ちゅい~ん」と高周波?な音。いかにも振動数が多そうで一見豪快に剃れそうだ。と・こ・ろ・が、1の普通剃りについては、かなりダメだ。実は僕が二台持ちにした理由はここにある。ずっと使ってきたブラウンのクルーザーシリーズの充電池がへタレてきたので、これをバックアップ用にして新しいものを購入すべくチョイスしたのがラムダッシュだったのだが、普段剃りでは全然剃れなかったのだ。「なんじゃ、こりゃ?。Amazonや価格.comのレビューはガセだったのか?」「う~ん買い失敗」と思ってしまったほど。正直クルーザーの方が全然バリバリ剃れたのだ(結局、普段剃りではクルーザーをウォーターフレックス購入まで使い続けることに)

ところが、である。2、つまりこれを風呂場に持ち込んだとき、その印象は正反対になった。ものすごく剃れる。恐ろしいくらい。T型カミソリも軽く凌駕するほどの剃り味なのだ。こんなに剃れる電動シェーバーって、いったい?といったほどの印象。T型カミソリは、もはやオワコン?か。

ただし、問題はある。一つは「ものすごく時間がかかること」。僕みたいな剛毛だと剃り終えるまで10分くらいやっている。二つ目は苦手な場所が結構あること。鼻の真下、アゴのカーブは苦手だ。で、これをやっていいかどうかわからないのだけれど、僕はこの部分には髭剃りを横に動かしている(T型カミソリだったら肌を切ってしまうやり方)。三つ目は肌に優しくない。ガンガン剃れるけれど、気がつくと結構血だらけになっている(笑)

次にウォーターフレックス。こちらはスイッチを入れてみると、その堅牢で重厚なデザインにしては鈍い、ユルそうな音しかしない。「これでも、あのパワフルに深剃りするブラウンなのか?」「うどの大木?」「進撃の巨人?」「腐った巨神兵?」と、拍子抜けさせるサウンドだ。振動数もラムダッシュに比べると圧倒的に少ないと思われる。まあ、剃れりゃ問題はないので、とにかく剃ってみる。1の普通剃りは快調だ。首振りヘッドが肌に密着し、ラムダッシュよりはるかに速いスピードで剃ることが出来る。ただし、ちょっと物足りないところが。これも音なのだけれど、電動髭剃りで剃るときの、あの「ジョリジョリ音」が一切ないのだ。つまり肌の上をフニャフニャとなぞっているだけ。「おい、これホントに剃れてんのか?」と不安になるが、刃を通過した肌を触ってみると、おお、確かに剃れている。また、ラムダッシュが苦手とする鼻の下、アゴのカーブはこちらの方が得意だ。ただし、最終的な仕上げは首振りヘッドを固定して(首振りヘッドは固定、15度、30度と三段階に切り替え可能)、この剃りづらいところに切り込んでいくってな感じにしなければならない(首振りは、ざっくりとやるにはいいけれど、首が据わっていない分、細かいところは苦手)。

じゃ、今度は2のお風呂場はどうだろう。で、試してみると、これも順調。まあ、満遍なくよく剃れる。肌にも優しい。ラムダッシュよりも剃り上がりも早い。ただし……最終的な剃り味は明らかにラムダッシュに軍配が上がる。ラムダッシュは本当にツルツル。ウォーターフレックスはちょっと強く指を当てると軽くザラザラ感が……。

やっぱり、剃り味に関しても二つは「どっちもどっち」という感じなのだ。

ラムダッシュは「ごちそう」、ウォーターフレックスは「定食」

で、最終的に結論を言えば「まあ二つ持っていて正解かな」というところだろう。要するに使い分ければよい。わかりやすく例えればラムダッシュは「ごちそう」でウォーターフレックスは「定食」ってなところだろうか。朝、忙しいときにはウォーターフレックスでササっとそり上げる。ただし完璧にはならない(ちなみにラムダッシュはウォーターフレックスで剃り終えた後の仕上げに使うと普通剃りでも深剃り効果を発揮する)。一方、休みの日などに風呂場で「じっくり徹底的に剃ってやろう」というときにはラムダッシュがキモチイイ。

で、もし一つだけならどちらにするべきかと言えば、それはウォーターフレックスということになるだろう。ごちそうは毎日食べられないから、ナンデモほどほどに使えるこちらということになる。ただし、僕のように剛毛でなければラムダッシュで普通剃りも十分出来るのではないだろうか。その場合にはラムダッシュをオススメしたい。

最後に、実は僕はもう一台電動シェーバーを持っている。ブラウンのモバイルシェイブM-90で、仕事場での「ちょい剃り」に使っているのだけれど、これは隠れた名機だ。一枚刃なのにものすごく剃れるのだ。お風呂場での利用は無理だが、水洗いも可能。電池式だから突然電池が切れても大丈夫。しかも価格は2000円台と格安だ。


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ブラウン・モバイルシェイブM-90。2000円台で実によく剃れる。


で、こうやっていくつか電動シェーバーを見てきたが、これくらい価格差と使い方がよくわからない商品は、あまりないのかも知れない。ただし、ウン万円もするアルコール洗浄のヤツ(以前は所有していた)を買う理由は、少なくともないような気はするけれど。