イメージ 1


「匿名性」について考えている。匿名は「実名-匿名」(「名を名乗る」ー「名を隠す」)「有名-無名」(「存在が一定範囲で知られている」-「存在が知られていない」というマトリックスで分類することが出来る。さらに、これに「著名-非名」(「存在が広く一般に知られている」ー「存在が知られていない」)という下位類型が加えられる(これは有名のサブカテゴリーと考えてもらっていい。実質的に無名と非名はほぼ同じ)今回はこの「匿名性」の図式を利用してメジャーなSNSのうちFacebookについて考えてみたい(ちなみに、ここで「匿名性」とは、こういった「匿名-実名」「有名-無名」「著名-非名」といった概念を包括する上位概念として用いていることをお断りしておく)。

facebookと現実世界空間的存在

facebookは実名制を担保にしたSNSであり、その中でユーザーは典型的な1=現実世界空間的存在(実名+有名+非名)となる、匿名とは対極にある存在。それゆえ必然的にfacebook上では現実世界におけるマナーがそのまま持ち込まれる。

現実空間持ち込みの窮屈さ
ただし、この「現実世界の持ち込み」は諸刃の剣でもある。現実世界的な責任性が持ち込まれるゆえ、そのレベルでは相互に信頼を寄せており、安全なコミュニケーション関係を維持することが出来るが、反面、というか当然のことながら現実社会の責任性が担保となるため、現実世界が規定する自由の拘束度もそのまま持ち込まれるからだ。だから、発言が「無責任である」とか「マナーに欠ける」といった面については敏感にならねばならない。

facebookにおける空間認識の誤用とトラブル

ところが、この特性、いいかえれば「facebookリテラシー」が涵養されていない場合には不適切な用い方がなされ、それがしばしばコミュニケーション上でトラブルを起こす。たとえば、facebook上にプライベートを公開する際には、その範囲に対して注意深さが必要だ。にもかかわらず、これはしばしば見受けられるのだが、周囲が見たくもないような情報を公開してしまうということがおこりうる。そのうち、最も頻繁に見られるものの典型として「自分の子どもの日常に関する写真の公開」をあげることが出来るだろう。まあ、愛する自分の子どもの成長ぶり、かわいらしさを公開したいというのは「親バカ感覚」ゆえわからないでもないが、それをそのまま受け取ってくれるのはごく一部の人間、つまり身内や親密な相手レベルに限られる。それ以外の人間にとっては、それはただの「うざったい情報」でしかない。これをやる場合は、そのことを理解してくれる人間をグループ機能にまとめて、そちらに公開するか、第二象限=2現実模倣空間的存在となることができるLINEやmixiを使うのが正しいということになる(つまりSNSの場を変えて、明確に「身内ネタ」に落とす)。これはよく考えてみればあたりまえで、現実世界では、こういったことはあまりやられていないし、やれば迷惑がられるのがオチだ。つまり現実世界の「公私の区別」はfacebook上でも意されなければならない。

ところが、これがSNSというヴァーチャルな空間ゆえ、facebookが現実空間と変わらないものであることが認識しづらい。そして、こういったfacebookの「誤用」が、結果としてfacebookそれ自体をうざったいものとみなし、それが結果として「facebook離れ」やfacebookに関する嫌悪感を生んでいることも事実だろう。またfacebookのこういったメディア特性にふさわしい利用の仕方を認識できなかったユーザーは「あれはただの同窓会名簿だ」と一蹴してfacebookから離れていく。

現実空間をヴァーチャルに持ち込むことで現実空間を活性化

言い換えれば、facebookは実名制かつ有名であること、そして非名であることを有効に活用することで初めてその機能が十全に活用できるようになるSNSなのだ。前述した「同窓会的利用」の有効的な活用もその一つ。別に不仲になったわけでもないが、生活空間が異なるようになったため、あまり関わりがなくなったような相手とfacebookを通じて関係を復活させるという「グローバルヴィレッジ(マクルーハン)」的な使い方をする際に、facebookは大きな威力を発するのだ。また、グループで括り、それを限定されたメンバーの連絡網として仕事などに利用する(グループ内はクローズドになる)と、その利便性はいっそう高まる。つまりニュースフィードで「友達」たちの近況をチェックしつつ、その一方でグループで日常的に連絡を取り合うことで、facebookはコミュニケーション・プラットホーム的な機能を有するようになり、この二つの機能がプッシュ機能として働いて、きわめて社交的空間を作り上げていくのである。

要するにfacebookは、実名+有名+非名の現実世界を、あくまでヴァーチャルにあげたものにすぎないので、現実世界の人間関係やルール・マナーがそのまま適用されるのだ。だから基本的にコミュニケーション能力の高い人間にとってはヴァーチャルな世界を用いてリアルを活性化することになるので至って便利なSNSということになる。

次回はmixi/LINE、Twitterと匿名性について展開する(続く)