SNSはリアルなコミュニケーションヴァーチャルに上げ、ヴァーチャルなコミュニケーションをリアルに下げることの繰り返しによって人と人のコミュニケーションをメインテナンス・活性化するツール。利用に際してはその前提となるリアルワールドでのコミュニケーション様式がヴァーチャルのそれにも同様に要求される。それゆえ、ユーザーはSNSメディアリテラシーとして、リアルワールドでのコミュニケーション様式である「公と私の区別」が必要となる。じゃあ、SNSを代表するFacebook、Twitter、LINEでは、この区別がどうやって機能的に分類されているのか。そして、ユーザーたちは実際にどうやって使っているのか?今回はこれらについて見ていこう!ちなみに、「公と私の区別」についてはFacebook≧Twitter>LINEという図式が成り立つ。

「公と私の区別」が最も厳密に規定されているFacebook

まず、公私の区別を細かく規定するエリアが存在するFacebookを例に取ろう。Facebookは多機能だが、最も多く利用されるのは「ニュースフィード」「グループ」そして「メッセージ」だ。

「ニュースフィード」は、いわゆる「掲示板」で、「友達」関係を結んだ相手全員に情報か公開されるエリア。そして最もパブリックなコミュニケーションが要求されるエリアだ。当然、多くの人間=「友達」に情報が公開されるので、ここではプライベートに関わるコメントは差し控えるのがルール・マナーとなる。だが、これが「グループ」となれば、閲覧可能な人間が限定され、かつ可視化されるので、プライベートならぬ「身内」的なコミュニケーションが許されることになる。さらに「メッセージ」ともなれば一対一でのコミュニケーションとなるので(Facebookの場合、「メッセージ」をグループで括ることもできるが)、ここでは完全にプライベートでクローズドなコミュニケーションが可能となる。

また、プライバシーをどれだけ公開するかは、個人の意志によってまちまちなので、これもまたプロフィールによって設定が可能となる。名前以外のほとんどをプロフィールに記載しなければ、実質的にFacebookはほぼクローズドなSNSとなる。ただし、この場合、SNSとしてはほとんど機能しなくなってしまう(極端な例としてプライバシーをほぼ公開せず、友達申請もせず、承認もせず、ひたすら写真のデータベースとして使うという利用法もある)。プロフィールを詳細に描き込めば、Facebookはそのデータを参照し、それに関連する情報や人物をユーザーに返してくる。たとえば、自分の出身高校、卒業年度を記入すれば、同じ記載をプロフィーに登録しているユーザーをこちらに「友達かも?」と示してくれる。それが実際にかつての同級生だったりすると、そこから友達申請をし、関係が結ばれる(復活する?)。もちろん、これはFacebookがプロフィールに関連する人物を割り出してくるだけではなく、自分のプロフィールも関連する人物に「友達かも?」と紹介するということでもある。だから、プロフィールを公開すればするほど、こういった人間たちと関わる可能性が高まる。だが、それは反面、リアルワールドでのコミュニケーションネットワークと同様のパブリックな関わりをより強く要求するものとなる。いいかえれば、公開すればするほど、社会性、社交性といったものが要求されるようになる。

これら機能を上手に使いこなすことができるのであるのならば、Facebookはきわめて有益なコミュニケーションツールとなる。とりわけ人間関係資本が豊富、つまり友達や仕事関係者が多い人間にとっては実に便利なツールだ。また、この三つのレベルを使い分けることで、Facebookをビジネスのコミュニケーションツールとして利用することも可能。だから、広く社会と関わることの多い大人向けのSNSということになる。

ニュースフィード、グループ、メッセージの明確な公私の使い分けが必要

問題は、この機能の使い分けがうまくできない場合、つまりFacebook上の公的空間に私的な情報を発信したり、その逆をやったりする場合だ。たとえばニュースフィードに自分の子どもの写真を貼ったりするのがその典型。これはプライベート、あるいはギリギリ仲間内だけでウケる情報。正直な話、閲覧する側は他人の息子娘にほとんど関心はないわけで、まあ迷惑な話となる。また自慢話をされても、ちょっと困る。あるいはまた、仲間内での他人の悪口なんてのがニュースフィードで展開されたら、これはエラいことになる。オフレコネタの一般公開になってしまうからだ。つまりニュースフィードでは、発信する情報の公共性を常に考慮に入れなければならない。

結局、ニュースフィード→グループ→メッセージという流れで公→私という使い分けをきちんとすることが基本となる。やっぱり、これらを閲覧することが想定されるリアルな人間との関係が、こちらが情報を流す際の担保となっている。

次回(最終回)はTwitterとLINE、そしてSNSリテラシーのゆくえについて。