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弱発泡系の緑のワイン”ヴィーニョ・ヴェルデ”の代名詞、カザル・ガルシア。手前の料理はバカリャウ・ド・ブラス。ほぐした鱈とタマネギを炒め、揚げた千切りのフライドポテトを混ぜ、生卵でぐちゃぐちゃにし、上にパプリカとオリーブをトッピングしたポルトガルの典型的料理。完璧なマッチングだ。



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ヴィーニョ・ヴェルデ・ティント。赤の弱発泡ワイン。残念ながらヴィーニョ・ヴェルデの赤は現在、日本では入手できない。どこかの業者が輸入してくれないかなあ!




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ポルトの住宅街の中にある安食堂で注文したヴィーニョ・ヴェルデ・ティント。デキャンタで供されたので銘柄は全くわからず。なんとビアタップ(生ビールを注ぐ奴)から注いで出されてきた。たったの1.5€



ポルトガル人が飲んでいるお酒はワイン?ビール?いえいえ

ポルトガル人は、他のヨーロッパ人同様、大の酒好きだ。ランチ時にもレストランのテーブルについているお客の半数以上がアルコールを口にしている。アルコールは食文化の一部をしっかりと占め、食事=アルコールという習慣が定着しているのだ。ただし、彼らが楽しんでいるのはビールではない。当然ながらワインだ(一人あたりの消費量は世界でも最上位に入る)。でも、実を言うとちょっとこれもビミョーに正解ではない。確かに見た目はワインで、色も赤と白なのだけれど……よ~く見てみると、ほのかに下から泡が立っているものが結構ある。そう、これは”ヴィーニョ・ヴェルデ”と呼ばれるポルトガル独特の炭酸系ワイン。日本語に直すと「緑のワイン」(Jリーグの東京ヴェルディと同じね。だからヴェルディはユニフォームが緑色)というカテゴリー。ただし、色が緑というわけではない。普通の白と赤だ。これはブドウが自体は若摘み(「ヴィーニョ・ヴェルデは若々しいワイン」という意味でもある)で、寝かすようなことはしない。つまり、生産したら、さっさと飲むことにちなんで命名されたとか。

しかし、日本ではシャンパンという言葉で称されるスパークリングワインとはちょっと違う。まず泡の立ち方が圧倒的に少ない。だから、口に運んだときも、あまり強い炭酸を感じない。で、これが実にうまい、というか日本人の口によく合う。というのも以前にもこのブログで紹介したけれど、ポルトガル人は日本人と食生活が似ていて、この食べものにヴィーニョ・ヴェルデがよく馴染むからだ。ポルトガル人も魚食系。マグロ、スズキ、アジ、イワシ、エビ、イカ、鱈なんてもの食べる。そんでもって普通の欧州人が食べないウナギ、アンコウ、タコ、で肉でも臓物なんてものまで食べる。料理法も焼く、煮る、揚げる(“天ぷら”はポルトガル語の”テンポラス”から名付けられている。“テンポラス”は”金曜日”という意味。安土桃山時代、日本にやってきたポルトガル人が金曜日はキリストが死んだ日なので肉を食べるのを避け、代わりに魚を小麦粉に付けて揚げたことが名称の由来)なんて感じだ。ヒカリものの開き(アジ、スズキ)なんてのもあたりまえのようにあるんだけれど、これが実にこの”なーんちゃってワイン”のヴィーニョ・ヴェルデにはピッタリ来る。

ビール以上ワイン以下で、両方のいいとこ取り

ヴィーニョ・ヴェルデの特徴を一言で表現すれば「ビール以上、ワイン未満」。この説明でいちばんわかりやすいのがアルコール度。二つの間の中間、つまり8~12%の間だ(もちろん、白だと下の方、赤だと上の方になる)。このアルコール度というのが食欲を誘う、そして真っ昼間に飲みのにちょうどいいという具合になる。たとえばビールだと飲む量が多いので、ヘタするとビールだけで腹いっぱいになってしまうということが起きる。一方、ワインだと今度アルコール度が高すぎて(11~15%)、真っ昼間からしこたま酔ってしまうということにもなりかねない。ところがこのアルコール度だと腹はふくれないし、あまり酔っ払うこともないということになる。しかもアルコールに加えて炭酸が入ることで適度に胃袋を刺激する。ということで、両方のいいとこ取り状態なのだ。飲み方もワインの「チビチビ」でもなくビールの「ガバガバ」でもない中間(スコスコ?)だ。

現代の日本人の食にヴィーニョ・ヴェルデはぴったり

味は、白、赤ともに軽い。白だったら、味自体が甘すぎず、辛すぎず軽やか。モノにもよるがライムのような香りと味のするものもある。ちょっと炭酸ジュースとか、ライムサワーみたいな感じがする。しかし、味はしっかりワイン。だから炭酸ジュースやコーラを飲みながら料理というのとは、ちょっと違う。これをギンギンに冷やしていただく。ちなみにポルトガルのレストランではヴィーニョ・ヴェルデの瓶にワイン冷却用の腹巻き?=クーラーをつけてテーブルに置いてくれるところが多い(冷たさをずっと保つことができる)。

一方、赤の場合は気持ち甘い。これは実際甘いと言うよりは炭酸が甘く感じさせているというところだろう(だから日本国内メーカーが販売している激安の甘い赤ワインとは味が全く違う)。タンニンはそこそこ多く、だから色も濃い。しかし重くはない。ちなみに赤であっても多少冷やして飲むというのが基本。似たような味のものはスペインのサングリアあたりだろうか。実際、レモンを入れて飲むというスタイルも結構ある。これだと炭酸入りサングリアみたいになる。

で、僕は提案したい。ヴィーニョ・ヴェルデを日本の食卓に導入しよう、と。洋食化が進む日本人。ヴィーニョ・ヴェルデはこの流れにはピッタリだ。しかも日本人はあんまり脂っこいモノを好まない。コテコテのグルーヴィがかかったハイカロリーのステーキとかを毎日じゃ、ちょっとたまらない。ということは、これにピッタリのボルドーのフルボディ・ワインを毎日というのも「どうもねぇ」ということになる(値段も高いし)。薄味、あまり脂っこくない、それでいて肉も魚も食べる、それでいて洋食。こういった最近の日本人の嗜好のスイートスポットに、ヴィーニョ・ヴェルデは入るのだ。

アルコールの味がわからない、そして苦手な学生たちが絶賛!

実は、先日学生たちの合宿でワインの試飲大会をやった。卒業生の追い出しコンパで卒業生たちにワインをプレゼントしたいというのがそもそものきっかけで、だったら合宿の打ち上げで、みんなでいろんなワインを試飲して、いちばん人気のあるものをあげることにしようということになった。で、8種類のワインを用意して全員で飲み比べ。中にはアルコールが苦手な学生もいて大変だったんだけれど、二十数人のメンバーのテイスティング結果はヴィーニョ・ヴェルデの代表的銘柄であるカザル・ガルシア(白)が圧倒的な支持を得た。大学二年と三年生なので、はっきりいって現時点で酒の味がわかるとは思えない(ちなみに、僕がイチオシしたのはこれではなかった)。にもかかわらず、彼/彼女たちはこれをいの一番に推したのだ。つまり、これは彼ら=現代人の味覚にジャストフィットしていることを意味しているということになる(おじさん=僕の味覚ではない(^◇^;))。

ネットで購入可。毎日の楽しいアルコール・ライフにオススメ!

ということで、ヴィーニョ・ヴェルデ、是非、試してみてほしい。ヴィーニョ・ヴェルデは現在、普通の店ではなかなか手に入れることができない(あったとしてもネコ絵が描かれたGataoくらい)。しかしネットのサイトに行けば購入可能だ。播磨屋や楽天のサイトがその代表で、ポルトガルワインの専門輸入業者の播磨屋のサイトからは現在7種類の中から選ぶことができる(http://www.w-harimaya.co.jp/13.html白とロゼのみ。残念ながら赤はない。入れてくれないかなぁ~!)。値段はすべて900~1000円程度。味もうれしいが、価格もうれしい。

ビール以上、ワイン未満という新しいカテゴリー、そして日本人、現代日本の食によくあうデイリー・アルコール、ヴィーニョ・ヴェルデを是非、お試しあれ!