スマホの重層決定

前回はメディアの重層決定という考え方に基づいて、新しく出現したメディアの普及が既存のメディアに影響を及ぼすことを指摘しておいた。一つは機能的に完全に被ってしまった場合には消滅すること。そしてもう一つは、被った部分の機能は奪われるものの、他の機能については温存され、それらの機能について再定義を受けること、というのがそれだった。ということで、今回はスマホの出現によって、この二つの運命になる可能性のある既存のメディアを取り上げ、考えてみよう。

かなりのメディアが消滅する! 

まずは消えていくものについて。

スマホの利便性は、ネット利用をハブとして様々な機能にスマホ・ユーザーを導いていくだろう。メールは言うまでも無いが、写真撮影、スケジュール管理、音楽鑑賞、ビデオ視聴、電子書籍閲覧といったものがそれだ(これら機能はすでに備わっていたりアプリとして存在している。だからパソコン・ユーザーがスマホを購入した人間は、二つのインターフェイスが酷似しているので、簡単にこういった機能を使い始めるが、パソコンに疎い一般ユーザーは、こういった“既存の機能”をスマホを購入することで“発見”することになる)。こういった「オマケ」をスマホは、既存のメディア寄りもはるかにハンディで操作が簡単、価格も安いというメリットを武器に巻き込んでいき、われわれのメディア生活の中心に腰を下ろしていく。そして、上記のように、これら機能が重複するメディアの多くが消滅するか、メディアとしての位置づけを変更させられることを余儀なくされるだろう。今回は、消えていく(あるいはほとんど消えてしまうであろう)メディアについて考えてみよう。

カメラ、ゲーム、音楽プレイヤー、そして電子辞書が消えていく?

先ずカメラ。もうデジカメはダメだろう。残るのはマニアックな高級機種だけということになるのではないだろうか。すでにスマホは撮影に十分なだけの性能、利便性、さらには撮影やデータ管理の簡便性を備えている。だから、今後デジカメの市場は縮小していくだろう。実際、すでにデジカメの売り上げはどんどん落ちている。カメラ・メーカーも最近一生懸命売っているのは高機能の商品。廉価のものはほとんど捨てているという状況だ(実はほとんど儲けがなくなっている。テレビCMを見ても宣伝しているのは高級機種だ)。つまり、デジカメが銀盤カメラを駆逐したように、今度はスマホがデジカメを駆逐することになる(もっとも、すでにガラケーで地ならしがされているが)。

二つ目はゲーム。これもえらいことになっていて、ゲームソフト・メーカーはその商品開発の中心をスマホに移行しつつある。その一方でゲーム単体のハードはすでにかなり危機的な状況になっている。ゲーム機器の雄・任天堂が大赤字を計上したニュースは記憶に新しい(新しいハード・ニンテンドー3DSが全く売れなかったのだ)。もちろん、これはスマホやガラケーのゲーム・アプリとバッティングしてしまったからに他ならない(グリーやモバゲーね)。これらは専用メディア(ディスクなど)すら必要も無く、ポチっとタッチするだけで購入出来てしまうからだ(しかもフリーソフトも多い)。ちなみにゲームのおもしろさというのは、それが画像や映像がキレイだとか、手が込んでいるとかではなくて、むしろシンプルであることがポイント。おそらくスマホのような小さな画面に最も馴染むのはソリティアみたいな王道ゲームだろう。で、ハードメーカーも仕方ないので通信機能とかドライブとかを付けて対応してはいるのだけれど……状況はかなりキビシイ。ゲームハードが残るためには大画面でやるとかとうものになっていくだろう(ただし、こちらもテレビがインターネット回線と接続されることがあたりまえといった時代がやってくればダメになってしまうだろうが)。

三つ目は音楽プレイヤー。これはもうとっくに変わってしまっている。iPodを中心とした音楽デジタルプレイヤーのせいだ。CDの売り上げがガタ落ちになり、みんなiPodみたいなもいのにダウンロードして聴くようになった。で、このiPod層が今度はどんどんスマホに流れている。実際、現在iPodの売り上げはどんどん落ちているのだけれど、これはAppleがもはやiPodという”Apple立て直しの祖”みたいなものを切り捨て、iPhoneにその機能を移行させはじめたから。だから日本でウォークマンの売り上げが遂にiPodを抜いたなどといって、脳天気に喜んでいるのはマヌケということになる。つまりCDを潰しているiPodみたいなデジタルプレイヤーが、今度はスマホに潰されることになる。それは、いうまでもなく、こちらの方が扱いが全然簡単なであることによる。

四つ目は電子辞書。これもほとんどその存在根拠を失うだろう。もはや電子辞書のたぐいはスマホ・アプリで配布されているし、ネットの辞書サイトにアクセスすれば事は足りてしまう。大きさを見てもスマホの方がハンディでポケットに入れて持ち歩ける。電子辞書だとこうはいかない。

ちなみにストップウォッチとかタイマー、アラーム、ICレコーダー、時刻表、方位磁石、そして懐中電灯なんてのも全てスマホのアプリにあるし(ガイガーカウンターまである)、これらの「基本的」な機能の多くが標準で添付されている(ガイガーカウンターはありません。念のため)。これらの類いも厳密な精密性を求められるというような特別な用途以外は、専用機は”お役ご免”となる。

そう、インターネット+スマホの組み合わせはメディアのブラックホール。他のメディアもどんどん吸収していくのだ!じゃあ、消滅することなく、なんとか機能を変更させられて生き残るメディアは、どんなモノで、どうなるのだろう?(続く)