ついにその日が来てしまった!

僕は大学でいくつかの講義を担当している。で、時に授業中にちょっとしたことを受講している学生たちに訊ねているのだが、その中に毎年訊ねる同じ質問がいくつかある。で、これはその中の一つ。

「みなさんはテレビとインターネット。アクセスしている時間、どちらが長いですか?」

この質問、これまでは圧倒的にテレビだった。そしてその比率もあまり変わることはなかったのだ。実は、この反応、ちょっと不思議に思っていた。というのも、僕はもう数年も前からインターネット接続時間の方がはるかに長くなっていたからだ。「学生たちにはインターネットはあまり馴染みの無いものなんだなあ」これが、僕のこれまでの印象だった。

ところが、である。今年は違った。先ず二年生を主な対象にした講義でこれを訊ねてみたところ、形勢が逆転。ネット接続時間の長い方がマジョリティを占めたのだ。これはかなりビックリした。で、その時、さらに

「今、手をあげた人は、あげたままにしておいてください」

と、お願いした。とっさに追加質問が思いついたからだ。それは

「手をあげている人でスマホを所有している人は、そのまま手を挙げ続けてください」

というもの。すると、である。下げられた手はなんとたったの一割程度だった。そう、彼らがネットを見るようになったのはスマホを購入したからだ。「スマホの増加=インターネットアクセス率の増大」という図式が、どうやら学生たちには該当するらしい。

でも、ちょっと信じられないので、他でもやってみた。一年生を対象にした講義、そして兼任講師で教えている大学(こちらな2~3年生対象)。結果は……全く同じだったのだ。

テレビがネットに食われる!

この結果に僕は愕然とした。「ああ、ついにその時がやってきたのか」と考えたからだ。現在、携帯電話の新規購入者のうち、スマホの購入率は五割に達している。そして、学生たちもケータイの買い換えの際にはどんどんスマホへと変更しはじめている。で、僕が愕然とした”その時”とは、要するに「テレビがネットに食われる時」のことを指している。

スマホの通話機能はトロイの木馬

当初、スマホはiPodとネットブラウザのついたケータイという位置づけで人々の間に認知されていた。つまりスマホ=ケータイ+αという図式。そして、実際その購入者のほとんどはそういった認識だった。ところが、購入した瞬間、その位置づけは全く変わってしまう。スマホとは実はインターネットブラウザ、しかも超小型のそれであり、これが利用用途の中心で、通話機能やメール機能、そして音楽鑑賞機能はただのオマケ、つまりスマホ=ネット+αというふうになってしまうのだ。実際、購入者のほとんどのスマホ利用の大半はネットブラウズであることは、今回の回答が証明している。少なくとも学生にとっては。

新しいメディア生活が、いま、始まる!

そして、この結果に普遍性があるとすれば(僕は、そう思っているのだけれど)これは僕たちのメディア生活が根本から変わろうとしていることを意味する。というのもスマホというメディアは不可逆的なメディア・ツールとしての側面を備えているからだ。つまり、一旦ケータイからスマホにチェンジすると、それ以降はずっとスマホを買い続ける。そしてその逆はない(事実、もうスマホからスマホへ機種変更をしたという人間も出てきているくらいで)。

で、それは、本当の意味での本格的なインターネットライフの幕開けと言ってよい事態に他ならないだろう。だって、みんなこれでテレビ視聴時間を凌駕するほどずーっとネットを見ているんだから。今回はちょっとこれを考えてみよう。(続く)