2011年夏のカオサン。レストラン、ゲストハウス、カフェ。とにかくあっちこっちでバックパッカーたちがネットにアクセスしている。一番多いのがiPhoneなどのスマホ、次がネットブック。中には大型のノートパソコンを持ち歩く人間も。メディアを携帯しないバックパッカーも、ゲストハウスに設置されたデスクトップパソコンかネットカフェでアクセスしている。
で、彼らが判を押したようにアクセスしているサイトがFacebookだ。何をブラウズしているのだろうと、ちょっと横目でのぞき込んでみると、そこには決まって白地に青のあの画面が。これは今年になって現れた顕著な傾向とみなしていい。しかし彼らはFacebookで何をやっているんだろう。
バックパッカーって?
バックパッカーという存在は、パッケージ・ツアーやスケルトン・ツアーなどの既製品、お仕着せの旅のスタイルに飽き足らない人間が、自ら旅をプロデュースすることを目指して選択した自由旅行という旅のスタイル。つまり、格安購入券だけを購入し、宿も予約することなく行き当たりばったりで自由に旅先を移動する。
想定されるバックパッカーのFacebook利用法
そんな彼らから想像できるFacebookのスタイルは、およそこんなところになるだろう。
バックパッカーAは旅先で知り合った旅行者BとFacebook上でも友達となる。そして、それぞれは次の旅の目的にへと向かう。そこで、またそれぞれが他のバックパッカーと知り合いになり、やはりFacebook上でも友達関係を結ぶ。たとえばAはC、BはDというバックパッカーと友達になる。するとこの四人はFacebookのグループや友達紹介機能を媒介に、互いを知るようになる。そしてAはBの紹介でCと、BはAの紹介でDと友達関係を結ぶ。で、四人はそれぞれ別の旅先へ向かう。そして、これと同じことが繰り返され、ここに旅のバックパッキングの広大な情報ネットワークが誕生することになる。つまり、たとえばAはBの知り合いのDの知り合いのFの知り合いのHと知り合いになり、そのHがたまたま自分が向かおうとする旅先を訪れたことがあるのならば、そこにその旅先の情報について照会することができるし、あるいはFがその目的にいるのならばオンライン・ミーティングと言うことで対面して情報交換することが出来るというわけだ。
こういったインターネットを利用した旅の情報ネットワークは、もちろん、もう10年以上も前から存在している。しかし、Facebookはこれを極めてお手軽なかたちにしたこと、そして旅先でのインターネットアクセスのインフラが充実したことによって、旅の情報ネットワークに極めて手軽にアクセスできるようになったという点が、これまでとは根本的に違っている。いわば、誰もが「電脳バックパッカー」として世界を駆け巡ることが可能になる……こんなことが考えられるはずだ。そして、実際、そういった旅のスタイルを実行しているバックパッカーは存在する。
しかし、である。カオサンで大流行のFacebookの使われ方の大多数は、実はこれとはちょっと異なっている。そして、そちらのマスの使い方を踏まえると、バックパッカーの真の姿が見えてくる。それはどういったものだろう。(続く)
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