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(オリエンタルランド社が創造したキャラクター、ネポス・ナポス)


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(JR舞浜駅イクスピアリ入り口にあったキャンプ・ネポス)


ロイヤリティからの脱却:コンテンツの創造

前回は、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド社(OLC)が、その経営がディズニーからのフランチャイズに基づいていること、そしてフランチャイズのロイヤリティ(上納金)が不当に高額なため経営に苦労することになった経緯について説明しておいた。さて、ではOLCはこのロイヤリティの呪縛からどのように逃れようと努力し続けてきたのだろう。ここからは、その艱難辛苦の道を見ていこう。

ネポス・ナポスというOLCオリジナル・キャラの失敗

まず、OLCが考えたのは、ロイヤリティの発生しない独自の事業展開をすること、つまりディズニーとは直接関係のない業態へ乗り出すことだった。ただしOLCといえば、実質「日本のディズニー」。だから、当然この財産、文化的資源をロイヤリティに抵触しない状態で利用するというのがとりあえずの得策と考えた。そして開始した新しい事業はキャラクター・ビジネスだった。ディズニーとは関係のないキャラクターを創造し、これをディズニーの周辺に配置することで、さながらディズニーのキャラクターであるかのような装いを見せるというのが戦略で、このキャラクター・ビジネスのために、OLCライツ・エンターテインメントという企業が設立される。

そして、この企業が発信したキャラクターは”ネポス・ナポス”と名付けられ、BSフジで子供向け番組として放映された。また、東京ディズニーシーとほぼ同時期にオープンしたJR舞浜駅前のショッピングモール・イクスピアリの入り口に“キャンプ・ネポス”というキッズ向けのアミューズメント施設も開設している。イクスピアリの入り口は、同じくOLCが運営するモノレール、ディズニー・リゾートライン舞浜駅の入り口の手前にあり、それ故必然的にディズニーの各リゾートに行くためにこのモノレールを利用する客たちはキャンプ・ネポスの前を通過させられるという仕組みになっていた。こうやって、ディズニー各施設に向かう途中に、施設を配置することで認知させることが狙いだったのだ。

コンテンツにコンテンツで対抗することの無謀

だが、もくろみは見事に外れてしまう。ディズニーからは全く乖離した、ディズニー・イメージすることすら難しいキャラクターは人々の関心を惹起するにはあまりに貧弱。いや、むしろ、ディズニーのイメージを破壊するネガティブな存在とすら思われてしまうほど。ワールドワイドなディズニーのキャラクターというコンテンツに対し、コンテンツで真っ向から勝負するというのはあまりに無謀だったのだ。そして、キャンプ・ネポスの方も、これからディズニーの各施設で興じようという人間から目を向けられることもなく、施設は閑古鳥が鳴くという状態に。結果として、このキャラクターはほとんど認知されることなく終わってしまう(現在、イクスピアリのキャンプ・ネポスも閉鎖され、そこには他の商業店舗が入っている)。

しかし、OLCはディズニーのキャラクターに対して、オリジナルキャラクターで対抗する、いいかえればコンテンツにコンテンツで対抗するというこのやり方を継続する。次にリリースしたのは“ポペッツ・タウン”というキャラクター・ワールドだった。しかし、これもまたさしたる業績を上げることもなかった(ポペッツ・タウンは現在、ソニー・クレイティブプロダクツが継承している)。そして、この二つの失敗の後、1009年、OLCライツ・エンターテインメントは事業を停止してしまう。

新しいオリジナルキャラクター=コンテンツによるロイヤリティの派生しない事業展開はこの時点では全くといっていいほど功を奏しなかったのだ。(続く)