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(アメリカを代表するコーヒー、Eight O'clock Coffee。日本で入手不可。ウマイ!)


アメリカでコーヒーを大量買い付け?

僕はアメリカに行くときには、ちょっと大きなスーツケースを持って行くことにしている。ちなみに、行きはカラッポか干物(アジとか丸干しとか)。後者の場合は友人へのお土産。当然ながらアメリカに到着し、スーツケースを開けた瞬間、ものすごい磯の香りがする。当然、スーツケースにもにおいは染みついて……。

で、なぜ大きなスーツケースなのかというと、帰りには、これにコーヒーをぎっしり詰めて、さながら密輸のように持ち帰るからだ。末端価格にして2万円程度(そして、干物の香りを、今度はコーヒーの香りで対抗させ、帰国したときにはスーツケースから干物の香りを追放するという目的も、ある)。

アメリカンはお湯で薄めたコーヒー?

コーヒーなんてのは日本にも腐るほど売られているのに、なぜそんなことをする必要があるのかと思われるかもしれない。ところが、残念ながら日本では販売されていないコーヒーがあるのだ。というかアメリカのコーヒーのほとんどは日本で発売されていない。で、それはアメリカン・コーヒーなのだが……。えっ?喫茶店に行けばそんなのあるだろ?いや、お湯で薄めればアメリカンじゃないか?{そういえば、昔、サントリーのブランデーのCMで「ブランデー、水で割ったらアメリカン」なんていう、とんでもないコピーもあった)。

しかし、これは完全に間違っている。アメリカン・コーヒーはお湯で薄めたコーヒーなんかじゃない。だいいち、アメリカン・コーヒーとは、ただただ単にアメリカで飲まれているコーヒー。ウインナー・コーヒー(ウィーンに行ってもウインナー・コーヒーはない)やスパゲティ・ナポリタン(ナポリに行ってもナポリタンはない)と同様、こういった名称のコーヒー、実はアメリカには存在しない。あくまでも「アメリカで飲まれているコーヒー」であって、アメリカ人はこれを「アメリカン・コーヒー」と呼んではいないのだ。実はアメリカン・コーヒーとは日本で60年代に名付けられたものらしい。つまり、日本には本当のアメリカン・コーヒーはないのだ!(以降、アメリカで飲まれているコーヒーを日本のアメリカン・コーヒーと識別するために「アメリカのコーヒー」と表記する)。

アメリカのコーヒーとは

では、アメリカ人が日常的に親しんでいるコーヒーとは。それは「焙煎の浅いコーヒー(シナモン・ローストと呼ぶ)」のこと。生豆は煎り方が浅いため茶色。これを煎れると当然のことながら色は薄くなる。それは、さならがコーヒーにお湯を薄めたかのように見える。でも、それは焙煎が浅いからそうなるだけのこと。

このコーヒーには独特の味わいがある。その最も顕著な特徴は「酸味が強いこと」だ。半面、苦みやコクは弱い。ヨーロピアン・コーヒーの対極なのだ。だから結局、味はライトになる。ただし、酸味はちゃんとあるわけで、日本のアメリカン・コーヒーのような薄べったい味ではないし(日本の場合、お湯で薄めたんだから、こうなるのはあたりまえ)、香りもしっかりあるのだ。しかも、 焙煎が浅いとカフェインの残留量が増えるので、シャキっとするというメリットもある(まあ、こりゃ「覚醒剤」だね。アメリカのワーカホリック・ビジネスマンがこいつを飲むのも、まあ納得か?)。

コーヒーはお茶

ライト・テイスト、そして苦みが無い分、胃も荒れない。コクがくどすぎない分、飽きもこない。そこで、結局、アメリカ人はデカいマグカップでガブガブ飲む。だから、たとえばデリなんかに行けば必ず売られているし、どんなに安宿でもコーヒーメーカーは部屋に備え付けてある。要するにアメリカ人にとってコーヒーは“お茶”なのだ。

で、僕はこのスタイルにハマってしまった。そして、これはコーヒーに対する根本的な認識の変化を僕にもたらした。それは……嗜好品から完全な日常的な飲料への変化だった。しかし、大問題が。それは日本ではアメリカン・コーヒーはあっても、アメリカのコーヒーは売られていないこと。これだけアメリカ文化が日本に浸透しているというのに、なぜかアメリカのコーヒーは入ってこない。これはなぜなんだろうか?(続く)