長期低落を続ける音楽業界

CDの売り上げが年々落ち続けていることをご存じだろうか?そのピークはなんと12年前の98年。それ以降、右肩下がりに落ち続け、現在の売り上げは最盛時の30%ほどにまでなっている。

コピーの横行

この原因は、もう一般ではとっくに明らかになっている。コピーの横行、言い換えればiPodの普及のせいだ。友人やレンタル店からCDを借り受け、これをコピーしてしまうなんてのは日常茶飯事。いや、それどころか、ネットに違法でアップロードされている音楽ファイルをダウンロードするなんてのもやられている。またYoutubeに画面付でアップロードすればこれは違法ではないので、これをダウンロードする(そのままでも使えるし、音だけを抜き取るソフトもある)。こうやって、タダで入手した音楽データが、結局、iPodに流し込まれるというわけだ。実際、僕の大学の学生もiPodに1000曲くらい入っているなんてのはザラだ。そして、これらのデータのほとんどが、前述した形式で入手されたもの。自らCDを購入し、これをコピーしてiPodで聴くというパターンはわずかだ。
だから音楽が聴かれることとCDが売れると言うことはあまり関係なくなってしまった。おそらく、現在の人間は以前よりはるかに音楽に接する機会が多いはずだ。たとえば、今、電車のなかでこれを書いているが、乗客の多くが耳にイヤフォンを装着している。その先にあるのは言うまでもなくiPodかウォークマン、あるいはケータイだろう。そう音楽リテラシーはどんどん向上していると考えた方がいい。

違法コピーを取り締まるというナンセンス

しかし、これではタダでどんどん商品を持って行かれてしまうわけで、音楽業界は危機的な状況にいずれ陥ることになるだろう。ということは、何らかの対処法を、そろそろ講じなければならない時期に来ている。
だが、著作権法を強化するという、後ろ向きのやり方はマヌケだ。業界全体で、違法コピーの徹底した摘発をするのが最も効果的だろうが、これはほとんど現実的ではない。というのも、あまりに多くの人間がやっているのでまずは不可能と考えられるからだ。また、もはや「音楽はタダ」みたいな感覚が一般化しているので、急に課金するようなことがあれば、逆に多くのリスナーがそっぽを向く可能性がある。実際、2000年前後にエイベックスが自社リリースのCDにコピー・コントロールをかけたのだが、大顰蹙を買ったことは記憶に新しい。音が悪くなる、iPodにコピーできないなど、非難が囂々だったのだ。ただし、こういった非難の背後にあるのは「音楽はタダ、コピーできなくてどうするんだ」という一般の認識だった。

いっそのことタダにしてしまえば、音楽業界は何とかなるのでは?

では、音楽業界はどうすればいいのか?で、今回はこれについて考えてみたい。ただし、逆説的な立場から(ちなみに、今回の特集は以前取り上げた「iTunes Storeが音楽聴き放題をはじめたら(http://blogs.yahoo.co.jp/mediakatsuya/archive/2010/05/26)」の続編と考えていただきたい。iPodについてはそちらを参照してほしい)
で、音楽業界を活性化するために必要なこととは

「リスナーがこれまで以上にコピーをじゃんじゃんやることである」

と、僕は考える。

「えっ?そんなことやったら業界がつぶれてしまうのでは」

いや、そんなことはない。もっとも確実につぶれるものはある。それは現在の音楽業界の構造だ。で、これは時代の流れからしてもはや古いので、僕はつぶれてしまっても仕方がないと思う。というか、現在の構造を維持すれば、自動的に音楽業界がつぶれることになる。つまり、音楽業界の構造を変えてしまえば、音楽産業は再び活性化する可能性を大いに秘めている。では、どうやって。

フリーって、何?

それがフリー、正確にはフリーミアムという考え方だ。なんなことはない、タダにしてしまえという考え方なのだが、音楽業界はこれに構造をシフトすれば必ず再び活況を取り戻すだろう、と僕は考えるのだ。で、一刻でも早くこちらの構造にシフトさせるために必要なのが「リスナーがどんどんコピーをすること」なのだ。しかし、一体それはどういうことなのだろうか?(続く)