現在、僕はタイに滞在中。その間、バンコクの安宿街カオサンでバックパッカーにインタビューを行った。なぜ、バックパッキングをするのかを聞き出すのがその目的。そこで、今回からそのインタビュー内容について紹介したい。今時のバックパッカーは、何を考えているのか?


バックパッキングは人生の意味を五感で伝えてくれる

大学で経営工学を学ぶOさんはバックパッキング2回目。1回目は今年の春で、それから間もないこの夏、また海外に飛び立った。とにかくバックパッキングの魅力に魅せられて、行かずにはいられなくなってしまったのだ。そこまで彼をバックパッキングに駆り立てるのは、実は、Oさんが人生との大きな結びつきをそこに感じていたから。では、それはいったい、何だろう。(8/7、午後二時半~四時。Buddy Lodge内、World Coffeeにて)

成長しているアジア諸国を見てやろう!

----バックパッキングをしようと思ったきっかけは?
インドに行こうと思ったことです。近年、中国やインドが急成長していますが、恐らく将来、仕事で関わる国になるので、五感を通じてその感じをつかんでおきたいと思ったんです。現在、大学で発電所設計や下水処理システムの開発について学んでいます。これらの技術が関わる仕事のフィールドは、やはり開発途上国。そういった国でのシステムの構築のためには、現地の人の望むものは何なのかを直接知っておかなければいけないと考えました。そのためには、現地の人々と直接関われるバックパッキングがベストの方法と判断したわけです。そこで、今年の春、一ヶ月かけてインドを回りました。

旅が教えてくれた将来との接点

----実際にインドを訪れてみていかがでしたか
とにかくショックでした。
成長していると言っても、街にはたくさんの路上生活者がいる。「これのどこが成長しているんだ?このままの状態、路上生活者がたくさんいる中でも、このままこの国は成長できるんだろうか?」そう考えたとき、自分が子どもの頃、テレビでこういった風景が映された時に感じたことを、ふと思い出したんです。「自分と違ってまともに食事にありつけない人がいる。世界にはこんな人がいてはいけない」って、その時は子供心に思ったんですが、実際にそういった人を間近に見て、ますます「こりゃ、何とかしなけりゃいけない」って思っちゃいましたね。ちょっと恥ずかしいんですが、自分の中にある「正義の味方」みたいな感覚がもたげてきて。おかげで、いま研究している分野の仕事で、こういった人たちのために貢献してやろうって気がグッと強くなったような気がします。

バックパッキングは内と外、二つの世界を見せてくれる

----そこで、今度は東南アジア、というわけですね
当初はアフリカに行こうと思っていたんですが、親に危険だからやめてくれと懇願されたのと、予算がちょっとかさむということで、今回は一ヶ月かけて東南アジアにしました。タイ、ベトナム、ラオス、カンボジア、それからネパールを回る予定です。その国の人たちの生活の様子を見て、この国には何が必要なのか。そしてエンジニアとして、どうこの国と関わっていけるか。どん欲に吸収できたらいいなと考えています。

---自分の将来の糧としてのバックパッキングという印象を受けましたが
ちょっと、カッコよく言いすぎちゃったかも知れません(笑)。もちろんバックパッキングだからアドベンチャーしてやるぞという気分もあります。地図でしか知らなかった場所を自分の脚で確かめてみること、言葉が通じない、誰も助けてくれない環境で自分がどういうふうにこれをやりくりして行くのかを、もう一人の自分の視点から見てみること。こんなところもバックパッキングの魅力と思っていますから。

----Oさんにとってバックパッキングはいろんなことを教えてくれる手段と言うことですね
バックパッキングは、そのままでは手の届かない世界を見ることが出来る。その世界は二つ。一つは見知らぬ「外の世界」、そしてもうひとつは見知らぬ自分自身の「内側の世界」といったところでしょうか。バックパッキングにハマったのは、自分が結局、何をやらなきゃならないのかを、五感を通じてリアルに教えてくれるからでしょうね。

----まだまだバックパッキングはこれからも続きそうですね?
現在は大学三年ですが、卒業後は大学院に進学することを考えるようになりました。もっともっと技術を上げなければ貢献はおぼつかないし、もっともっとバックパッキングしないと、現地にあった技術を見いだせないですから。
もっとも、行き損ねたアフリカにも、やっぱり行きたいというヤクザな気分もちゃんと入ってますけどね。進学すれば二年間、時間を稼げますから。(笑)

インタビュー後記

「バックパッキングと自分の将来ががっちりと繋がっている」という印象が、Oさんの旅スタイルには感じられた。これからも旅を続ける中で、自分の将来の目的意識と仕事へのモチベーションがどんどん高まっていくのではないだろうか。また、正義の味方でも独善的にはならないように警鐘を与えてくれる役割も旅は果たしているのだろう。でも、まだ彼の先は未知数。だから、Oさんの旅もまだしばらくは終わりそうもない。