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(レストラン,Kansai fu(ll))


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(お好み焼きはここのメインの一つ)



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(豚玉。中にまでソースがびっしりで、素材の味を全て台無しにしている(笑))



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(オープンキッチン・スタイル。板さんが鉄板で腕を振るっている)


日本料理店が盛況

タイ・バンコクの安宿街カオサンの変容について考えている。

80年代、日本人バックパッカーがバンコクで定宿としたエリアはファランポーン駅(バンコク中央駅)西のジュライ・サークル周辺だったが、90年代に入りここは寂れ、代わってカオサンに日本人が大挙して押し寄せるようになる。そして、日本人バックパッカーにとってバンコクと言えばイコール、カオサンを指すようになっていった。

当時、日本人が困ったのは、ここにはまだ日本的環境がほとんどなかったこと。日本人がタムロするゲストハウスはすでにあったものの(Friendly G.H.、Terrace G.H.、Thai G.H.など)、日本食レストランはカオサン通りには一件もなく、日本食にありつこうとするならカオサン北・バンランプー地区・プラスメン通りの8番らーめんか、その数軒先にあるあやしげな日本料理店・クライ・シーに行くか(いまだに、かなりあやしげな料理にありつけて、おもしろい。興味ある方はお試しあれ)、スクムビットの日本商店街まで脚を伸ばさなければならなかった。

そんなカオサンに日本料理店がオープンしたのは90年代末。竹亭、レックさんラーメン、トラベラーズ・ロッジ併設食堂などが相次いでオープンした(後者二店舗は現存せず)。バンランプー運河を越えたところにはMusashiという居酒屋も。遅ればせながら、やっとのことで日本の環境も、この頃から、ここに入るようになったのだった。

ところが、2010年の今年、カオサンにやってきてみると日本料理店はさらに数を増やしていた。気づいただけでも、新たに五店舗がオープン。しかもそのうち二つは屋台だ。寿司、刺身、てんぷら、カツ丼、カレーライス、そば、ラーメンはもちろんのこと、チェンマイ産コシヒカリのおにぎり、広島風お好み焼き、オクラ納豆なんてものを出すところまで。現地で生産しているということもあるが、スーパードライのドラフトを提供しているところもある。

ところが、である。この新しく建ちはじめた日本料理店。ちょっと、ヘンなのである。

退化した?日本料理

バンコク・安宿街・カオサンを巡る最近の変貌のひとつに「日本」という言葉にまつわるものがある。まず日本料理店。これがカオサンに林立し始めたのだ。ただし、これがちょっとヘン。その「ヘン」なところだが、いろいろある。

一つは味。カオサンに日本料理店が建ちはじめたころ、その店の味はまあ、日本のものと同じというわけにはいかないが、かといってそんなに変なものでもなかった。メニューだってうどん、そば、寿司、カツ丼、という感じだったのだ。たとえば竹亭のメニューは至極まともだし、レックさんラーメン(あちこちに店を移動し、おしまいにはカオサンから追放されてしまった)も味は薄いが、まあラーメンだった。

後発の店のほうがヘンな味

ところが新しく開店した店の中にはメニューがむしろヘンなものがあるのだ。かつて、まだ日本の食文化や、日本人の海外渡航者が少なかった頃、世界の主要都市に点在した日本料理店は、日本に関する情報がかなりメチャクチャだったため、味の方もかなりヘンだったのだが(たとえば80年代前半、インド・デリーのコンノート・プレイスにあった日本料理店”GINZA”では、「豆腐もやし」「すき焼き天ぷら」という奇っ怪な料理があった。前者は高野豆腐ともやしをギーの油で炒めたもの、後者はマサーラー味付けの甘い醤油に天ぷらが入っているというものだった。どうみても和食からはほど遠かったのだけれど)、こういったヘンな味付けが、結構ある。たとえば、今年オープンした”Kansai fu(ll)”というレストラン。お好み焼きとそばうどん、そして神戸ステーキと寿司・刺身がウリなのだが(まあ、このラインナップだけでも、ちょっとヘンではあるのだが)、ここの広島お好み焼き、牛すじ焼き。簡単に言うと、どっちももの凄い量のソースで素材の味を全て台無しにしているというかソースを味わうといった感じになっている。いや、よくよく考えてみれば牛すじ焼きをソース味にするって、あったっけ?

でも店内はオープンキッチンふうで、タイ人の板さんが和食料理人の格好で鉄板を扱っている。

でも、この「ヘンな日本」は料理だけに留まらない。(続く)