アルバム独自の楽しみは

もし、 “アップルのiTunes Storeが定額聴き放題サービスをはじめたら”という前提で考察をすすめている。

とはいっても音楽配信だけではレコードやCDが培ってきた楽しみ全てが満たせるわけではない。レコード・CDの独自の楽しみとは?ここでは二つほどあげておこう。

CDを所有することの喜びは?

一つは物理的媒体を所有すると言うこと。つまりレコードやCD,ジャケットというかたちあるものをコレクションする楽しみだ。ただし、こういう所有欲は世代と共に薄れていく可能性が高い。かつては大事に保管されていたマンガや雑誌も、今や読み終えたら破棄されるという時代。マンガなどは破棄されることを前提とした安普請な装丁になっていたりもしている。

歌詞やライナーノーツは?

もうひとつはパッケージのコンテンツが持つ楽しみだ。ジャケット、歌詞、ライナーノーツといったものがこれにあたる。ただし、これも解決手段はある、というかすでに実行に移されている。まずジャケット。iPhoneやiPod Touchを利用している人間に対しては説明の必要もないだろうが、演奏中はディスプレイにジャケットが表示されているのだ(裏ジャケはないが)。では歌詞やライナーノーツはどうか。これも歌詞については対応しており、全てではないが、再生時に歌詞が表示されるものもある。あるいは歌詞をソフトウエア的にダウンロードするソフトも存在する。

さらにライナーノーツはどうだろう。実はこういうCDやレコードが備えていた音楽以外の楽しみの部分を取り込んでミュージックライフの彩りを添えるような機能を加えようとしているのがアップルのディバイス・iPadだ。iPadにはiTuneがインストールされているが、ITMSからのダウンロード時にこれらの周辺的楽しみを同時にダウンロードできるようにしておけば、iPadでiTuneを操作しながらライナーノーツや歌詞を楽しむことが出来る。このときiPadはレコードのジャケットの役割を果たすようになる(iPadはiPhoneやiPod、CDより遙かに大きくジャケットを表示できる)。いや、場合によってはここに写真集やビデオとかのコンテンツを付ければ、それはレコードやCD以上に楽しめる楽曲のオマケとなるのだ。恐らくこんなオマケのサービスも、早晩開始されるだろう。

ではCDはどうなるのか?

それではこれまで主軸であったCDは、そしてレコード店はどうなるのか。おそらく、そのほとんどが消滅するだろう。それは傘がオートメーション化され大量生産されるようになって傘修理がなくなったこと、ケータイが普及してポケベルがほとんど消滅したことと同じだ。機能がかぶってしまえば、不便な方が消滅するのは必定の成り行き。だからレコード店などは消えて行かざるを得ない。

ただし、完全消滅と言うことにはならないだろう。というのもCDは、やはり音質的にはダウンロードの楽曲を凌駕する。iPodくらいではそのさはほとんどわからないが、高級なオーディオで試聴してみると、素人でもわかるくらいその差は歴然とする。ということは、一部のオーディオマニアたちがこれを買い求めることになるだろう。たとえばジャズやクラッシックに造詣が深く、オーディオにも数百万円以上を平気でつぎ込んでいるようなマニアたちだ。逆に言えば、こういうマニアに向けてCDはもっと高音質化し、装丁もゴージャスにして販売することで付加価値を加え、荒利をあげると言うことが考えられる。ただし、こういったマニアは少数なので、これに対応するかたちでごく少数のCDやレコード店が残存するようになると言うことなのだけれど。

ということはレコード会社のCD・レコード販売の事業はほとんど壊滅するわけだ。しかし、である。それでも音楽産業が潰れるということは無いだろう。なぜか?(続く)