音楽産業はどーなる?

もし、 “アップルのiTunes Storeが定額聴き放題サービスをはじめたら”という前提で考察をすすめている。

でも、こんなことになれば音楽業界は潰れてしまうのでは?と思われるかも知れない。ところがそうはならない。もちろん現在のような構造の維持は不可能だ。つまりレコード店の多くが撤退を余儀なくされるし、CD市場も大幅に縮小するだろう。そこで必然的に構造の転換と、こういったサブスクリプション・システム(=音楽聴き放題サービス)の音楽業界への参入を余儀なくされるということになる。

コピーの横行に伴うCD売り上げの減少

CDという重要な商売道具を取り上げられてはたまらないと考え、現在、音楽業界はこういったサブスクリプション・サービスにはこぞって徹底反対している。だが、サブスクリプション・サービスの展開は、むしろ音楽市場を豊かにする可能性が高い。

現状でのCD販売状況を考えてみよう。CDの売り上げは98年をピークに年々減少傾向にある。たとえばアルバムは98年には年間3億枚の売り上げがあったが、2009年には1億6500万枚と半分近くに落ち込んでいる。この理由は言うまでもなくコピーの横行にある。コピーはもちろん著作権法違反であるが、そんなことはほとんどお構いなしに一般的な行為として普及している。技術的に可能な状況が創り出されているからだ。しかもほとんどタダ同然の経費で。知人・友人、あるいあレンタル店からCDを借りてくれば、あとはパソコンのドライブに入れるだけなのだから。しかも生CD一枚が、今や30円程度。ようするに友人から借りてくれば、そっくり同じアルバムが30円で手に入るのだ。レンタル店もコピーこそ禁じているが、なんのことはない、TSUTAYAのレジ・カウンターの前には生CDが積まれて大っぴらに販売されている。なにをかいわんや、である。

こうなると、CDはコピーされることが基本的には前提になる。しかも一枚がかなりの人間にコピーされるわけで、音楽産業としてはこれではあがったりだ(レンタル店は著作権料を払ってはいるが)。そして,実際そうなっているのが現状だ。言い換えれば料金徴収システムが破綻しているのだ。その結果がCDの販売数の落ち込みというわけなのだ。だからJASRAC(日本音楽著作権協会)はコピーの防止に躍起になっているのだが……。

iPodがある限りコピープロテクトはかけらない事情

コピーを防止することは技術的には可能だ。ただし、もはやコピーという行為を止めることは難しい。たとえば十年ほど前Avexなどがコピー・コントロールを自社の発売するCD 全てに施した (こういったCDはCCCDと呼ぶ)ときに起こった事態は、このことを裏付ける。Avexはこれによって売り上げを二十パーセントほど落とすことになったのだ。というのも、コピー・コントロールをかけると、コピーこそ出来なくなるが、当然ながらパソコンを通してCDをコピーするiPodにも落とすことが出来なくなる。ちょうどiPodが普及しはじめた頃だったので、コピー・コントロールをかけると言うことは販売に直接影響するという事態を招いてしまったのだ。つまり、iPodというツールで音楽を聴くというスタイルが出来上がっている以上、CDからコピーできないというのは死活問題になるのだ(実際には,やろうと思えばパソコンでコピーも可能であったが、作業が手間取ったこと、そしてこういった触れ込みが購買意欲を低下させたことは確かだった)。時は既にiPodの天下になっていた(また、それにiPhoneが追い打ちをかけた)のだった。

ということは,iPod=iTunesがベースになって,音楽産業はその構造を変容させることを余儀なくされていくことになるのだ。しかし、それは業界のサバイバルと,果たしてどうやって繋がっているのだろうか?(続く)