おバカキャラ、ブレイク!

クイズ番組「クイズ・ヘキサゴン」がきっかけで、オバカキャラが突然ブレイクしている。なんの芸風もないと見られている、これらのキャラクター。とにかくとんちんかんな返答をし、無知をさらけ出す。そのバカさ加減がうけるという妙竹林な事態が。おバカユニット「羞恥心」は、シングル第2弾「泣かないで」もオリコン初登場第2位という勢い。川崎ラゾーナのイベントでは一万二千人を集めたとか。さて、おバカキャラが突然注目されはじめているのはなぜなのだろうか?実は、これこそ、時代のメディアリテラシーを測定する一つの指標に、僕には思えるのだ。


お笑い若手芸人は、おバカキャラに、ヘタすると負ける!

おバカキャラがなぜ受けるのか。それは、ここ数年の若手お笑いブームが関係していると僕は読んでいる。

若手お笑い芸人は「エンタの神様」などで、短い時間を与えられ一発芸、より厳密に表現すれば一発ギャグ、一発コピーで人気を取り付けるというパターンがほとんど。で、受けるのはこの一発ギャグである。「がっかりだよ~っ!」「そんなの関係な~い」「グ~ッ」「ヌーブラヤッホー」「ルネッサ~ンス」みたいなのがその典型。言いかえれば、この一発ギャグが当たれば人気を獲得するし、外れれば全くブレイクしない。さらに、このギャグが飽きられれば捨てられる。ということは、受けているのはこの「ネタそれ自体」である。で、これら芸人はほとんど「芸」は全く持って無いに等しい。出来ても、せいぜい素人芸だ。あるいは一発ギャグ以外は極めてベタなネタのフリとなる。で、このレベルに視聴者はすっかり慣れている。こちらの方はかなりおもしろくない。だから、この一発ギャグだけをおいしく消費し、あとはさっさと捨てるというメディアリテラシーが染みついているのだ。

で、こんな状況でお笑いがとれているとなると、これはおバカキャラにとっては好都合ということになる。彼らは若手お笑い芸人に比べて遥かにアドリブが豊かだからだ。いやそれは、厳密に表現すれば「豊か」ではない。天然で、ボキャ貧(語彙の絶対数が少ない)で文脈が読めないため、完全にKYな話や単語を羅列する。これが破天荒で定型にはまらない。で、それが結果としてオリジナリティとなり、あたかもアドリブが豊富なような事態を結果する。視聴者はおバカが次にどんなことを言い出すかに期待を寄せる。で、それが予想だにせぬ展開ゆえおもしろい。これは若手芸人でもマネの出来ない、ある意味、クリエイティブな「芸風」と言える。

また、おバカキャラはもう一つ利点がある。それは「おバカ」であると認定されていることだ。視聴者もこの立ち位置で彼らを見る。つまり、自分よりも頭の悪いヤツが芸人をやっているという認識である。ということは、芸人であっても見下げた存在。自分は優位な立場に立ちながら、彼らのどこから何が出てくるか分からないしゃべりを楽しみにすると言うことになるのだ。視聴者の優越感も満足させてくれるというわけだ。

賞味期限は短い

ただし、彼らもまた若手芸人同様、賞味期限は短いだろう。もとよりこれは天然、芸ではないし、第一圧倒的なボキャ貧=語彙不足の状態にある。表現力が豊かというわけでもない。ということは、テレビに露出し続ける内に、この語彙の少なさが仇になってくる。つまり、現在こそKYなので他に比べて際だって見えているが、やがてこのおバカにはおバカなりのパターンがあることが視聴者には分かってくるはずだ。そして、そのパターンに恐らく視聴者たちは早々に飽きてしまうだろう。ということは、現在人気を博しているおバカの寿命もあまり長いことはないと言うこと。ユニット・羞恥心、一年後には確実に消えているだろう。

ただし、おバカキャラというカテゴリーをメディアが発掘したことは大きい。恐らく今後次から次へとおバカが発掘されていくだろう。そして人気を獲得するだろう。そして速攻で消えていくだろう。そう、さながら一発ギャグで打っている若手お笑い芸人のように……