東国原宮崎県知事にお願いしたこと

インタビューが聞き手と話し手の合作であること。このことを僕の二つの経験から解説してみよう。

ひとつは昨年十月、東国原知事にインタビューしたときのこと。与えられた時間はなんとたったの二十分だった。これではインタビューの時間が実に短いといわざるを得ない。しかし、それでも開始三分間、僕は知事にインタビューをするのではなく、このインタビューの意図、そしてこちらの知事の姿勢に対するスタンスの説明を行った。具体的には、1.当時メディアで批判されていた知事の「テレビへの過剰露出」に、こちらはむしろ肯定的な立場にあること、2.これは宮崎県だけに放送するインタビュー番組なので、県民に「うちあけ話」をするといった感じの話をしてもらいたいと、3.今回は知事のメディアへの対応、メディアの使い方についてのみインタビューを行うこと、の三点を説明した。要するにインタビューの内容についての前提、文脈を知事に踏まえておいてもらおうと思ったのだ。

そしてインタビューを開始したのだが、僕は、知事が何度も質問されていてウンザリしている内容から質問を切り出した。それは「知事はテレビに出すぎといわれていますが、その理由についてお話ください」というもの。

この質問をされた時、これまで知事は常に弁解がましい発言をしてきた。そして、ちょっとウンザリという顔をするのが常だった。ところが、こちらが「メディアへの露出に肯定的」というスタンスと「メディアの利用方法について宮崎県民だけに本当のところを話してほしい」という要請をインタビュー前に行っているゆえ、知事の対応は普段のそれとは全く異なったものになった。つまり、弁解ではなく、テレビに露出することの積極的な理由を語り始めたのだ。ちなみに、その理由は「自分の露出で、その背後にある宮崎の知名度を上げるため。そのためには報道番組だけではダメで、視聴率が高く番組数が多いバラエティへの出演が適切と考えた」というものだった。

そしてこの時、少し上を向き、言葉を探し始めるようなしぐさをし、そして楽しそうに語り続けたのだった。あきらかに東国原知事は仕込みネタ=定形ではなく、今、この時点で考えていた。「やった!ちょっとスクープを抜いた」。僕はちょっとそんな気分になった。

もうおわかりだろう。この時、明らかに僕は東国原知事とインタビューをねつ造していたのだ。(続く)
※なお、インタビューの実際については2007年10月14日のブログ(http://blogs.yahoo.co.jp/mediakatsuya/archive/2007/10/14?m=lc)をごらんいただきたい。)