政党、政治家支持から政策支持へ=しがらみの排除
知事の不可解な行動
ここ一年。東国原知事の手法の中には一般の政治家のやり方ではちょっと理解しかねる行動、言動が数多く見られた。たとえば昨年四月の統一地方選では、自らの人気にもかかわらず、これを利用して東国原チルドレンを指名しなかったために、オール野党の県議会は安泰となった。また最近では中山成彬氏を応援するとか、自民党の政策を支持するなど……これらは一見すると、「知事、実は保守与党寄り、実はしがらみ志向」との印象を抱かせるものでもあった。ただし、ここで知事が言わんとしていたことは「政策重視」ということ。つまり、政策がよいものであったならば、党がなんであれ、政治家が誰であれ、そんなことは二の次だというもののとらえ方であったように思われる。
そして今回の超党派での政策組織「せんたく」の立ち上げは、その視点を明確に打ち出すものといえるだろう。これもまた政党や個人に関わりなく、政策に焦点を当てるというものでは、視点は一貫している。
これら不可解な行動を一貫するもの
さて、一年前の知事選のことを思い返してみよう。この時、争点となったのは「しがらみ」だった。つまり政党や代議士との癒着が県政の腐敗を招き、それに嫌悪感を抱いた県民が指名したのが、「しがらみ」の一切ない東国原知事であったことは記憶に新しい。そして、知事の「政策重視・政策至上主義」の方針は、「しがらみの排除」という点でも、非常に効果的なやり方といえるだろう。
これまでの政治といえば、政党や政治家に庶民がいろいろとお願いをするかわりに、庶民がこれを支持するというのがパターン。つまり、組織や人間とのつながりが必ず政治に含まれていたわけで、実はこれが「しがらみ」の温床になっていた。
ところが、こうやって政策と政党・政治家を完全に分離してしまうことで、このような「しがらみ」を作ることが、事実上、困難になる。また、政党・政治家は政策次第で支持されたりしなくなったりするわけで、それが結果としてちゃんとした政策を打たなければならなくなる。
こう考えると、東国原知事の不可解な行動。実は「政策重視」と「しがらみ」排除と言う点で、一貫性があったということになるだろう。
オマケ・次は国政改革のキャラクターシールに?
もっとも今回の「せんたく」の発起人は、北川前三重県知事や松沢神奈川県知事、佐々木毅前東大総長である。ただし「せんたく」立ち上げの記者会見でまん中に座っていたのは東国原知事だった。これはなぜか?実は知事は「北川さんにまんまとハメられた」とオフレコだがコメントしている。発起人の一人として参加し、会見席に臨んでみたら、自分の席がまん中だったというわけだ。ただし、こういった北川氏のやり方はメディア論的には「常套手段」と判断できる。とにかくマニフェスト=政策重視の政治、そして地方から中央へ提言する政治。こういった新しい政治のスタイルを提唱するに当たって、東国原というマークほどわかりやすく、耳目を集めるものはない。宮崎県産品を売り込むために商品に次々東国原シールがつけられ、これが膨大な売り上げに繋がったように、今回もまた「せんたく」という商品=政治集団を売り込むために東国原シールがつけられたというわけだ。
さて、この「せんたく」というグループが本当に、日本の政治を「洗濯」してくれるかどうかはまだ未知数だ。だが、もし、そのようなことが起きた暁には、東国原英夫という存在が、国政改革の記号となるであろうこと、それは想像に難くない。
社会の大きなうねりが生じるときには、かならずキーマンが登場する。本人が実際にそれを起こたか否かにかかわらず。歴史というのはそういうものだ。
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