基本重視・基本繰り返しの勉強と同じことを、われわれの勉強以外のところでは日常的にやっている
で、こういった公文式のような同じことを飽きることなく繰り返して行くことで、身体にスキルを打ち込みレベルを上げていくという作業。実は、偏差値の低い人間ですら日常的にやっていることでもある。ただし、そのスキルアップの対象には「勉強」とは書いていないので、ヘンな抵抗がなく、苦もなく、しかもスピード感を持ってやっているのだが。それは何か。いろいろあるが、ココでは一つだけ取り上げておく。テレビゲームだ。例えばマリオにしてもドラクエなどのRPGにしても、これはひたすら同じことの繰り返しだ。次のステージ・レベルに進むためには、現在のステージをクリアしなければならない。誰かが自分より上のステージをやっているところをやらしてもらっても、全くできないなんてのは言わなくてもわかることだと思う。で、現在のステージから次に行くためには、現在のステージをほとんど完璧にできている必要がある。つまり90%以上の達成度があって次のステージに進める。で、これができれば次のステージで、また同じ作業が待っている。そう、これって前述した英語のスキルアップ方法と全く同じ。ただし、これがゲームであるため、英語の勉強と全く同じことをやっていることに気づかないだけなのだ。
僕の家庭教師経験
実証例を一つ。もう十数年も前のこと。僕は予備校の教員をやっていたのだが(講座名は”法政・明治英語”というものだった。六大学の偏差値下位二つに合格するための英語を教えるわけね)このとき、なんとこの予備校の理事長に、自分の息子の英語の家庭教師をやってくれとたのまれたのだ。その息子は中学三年、頼まれたのは11月も末になってからだった。とにかく、全然英語ができない。親としてはそこそこの高校、できれば大学にエレベーターで行けるところに入れたいのだが、現在の状況ははなはだ酷い。そこで、大至急対応をして欲しい、というわけだ。偏差値は、現在40。う~ん、こりゃキビシイ。RPGおたくの少年をダマくらかした?
その息子の趣味はゲーム。とりわけRPGが大好きでドラクエ、ファイナル・ファンタジー、桃太郎電鉄、ロマンシング・サガと、人気のロールプレイングゲームのほとんどをこなしており、人生RPG見たいなガキだった。もちろん英語なんかに興味なし。そこで、僕がやったのは、上のやり方。つまり一番簡単な問題集からやらせたのだ。もちろん文法についてはポイントをこっちで教え、同時に中学校の教科書を一年から全部やり直させた。
でも、ただ押しつけたら、英語に興味のないこの息子がやるわけない。で、こちらとしては受験のための体系=見取り図を彼に見せることから始めた。そう、受験英語をRPGに見立て、攻略すべき世界全体をまず示したのだ。そして、ステージを細分化させ、それらをどう攻略したらいいのかと言うことを、その都度教えていった。で、次のステージに進むときには前のステージがちゃんとできていないと処理が十分にこなせないことをわからせた。つまりスライムをやっつけることもできないのに、次のステージのモンスターを倒すことなど決してできないということを、本人に自覚させたのだ。
RPGおたくの少年はこの図式に見事にハマった。つまり受験英語=RPGの図式を頭の中にセットしたのだ。こうなるともう話は別。寝ないでRPGやっていい、っていわれたらずーっとやっている人間だったので、当然、英語を寝ないでずーっとやっているという状況に入っていった。で、RPGだったら親が「ヤメロ」と注意するだろうが、これが「勉強」、しかも「受験勉強」だから親の対応は全く逆になる。英語に夢中になる息子に夜食を作り、お菓子を買ってきてやり、この英語の内容ができたなんて自慢話を聞いてやり、ってなことにり、もう本人はやりたい放題状況。僕が家庭教師にやってきたときにも、「今日はこれだけやって、言われたステージよりちょいとアップしてきたぜ。アイテムの使い方も磨いたぜ!」とか自慢するようになる。
こっちとしては”思うツボ”。そこで、新たなアイテム、いや学習内容を提示し、次のステージをどうクリアすればいいのかを伝授。そのうち都立高校受験の英語なんか楽勝モードになっていく(都立高校の入試問題は百点が当たり前になっていった)。で、こちらとしてはそこで、「これまで教えていたのは公立攻略アイテム。これからは私立ハイレベル・アイテムのその1を教えよう。それができたら、さらに上の私立のアイテムを教えてやっかんな」なんてことで、奥義を伝授。もう、彼の方は面白くってたまらなくなり、挙げ句の果ては他の受験科目に関する攻略方法まで聞いてくる始末。
結局、この少年は三ヶ月ちょっとの間に偏差値を25以上アップし、駒沢高校に入学。エレベーターそのまま駒澤大学に進学していった。親である理事長から結構なボーナスが支給されたことは言うまでもない。(続く)
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