テーマ性が破壊されたテーマポート

一方、テーマ性をよく踏襲したポートも、よく考えるとおかしいところがある。最もテーマ性がはっきりし、煮詰められているのはアメリカン・ウォーターフロントだろう。ニューヨーク・マンハッタン南部のフルトンマーケットあたりをシミュレートしたピアがそのメインで、周辺に豪華客船コロンビア号、そしてマンハッタンの真ん中をイメージさせるホテル・ハイタワー(タワーオブテラー)、ブロードウェイ・ミュージック・シアターが、さらにはエレクトリック・レイルウエイがあり、ある意味、金ぴか時代(20年代)のニューヨークの雰囲気が良く再現されている。ポート内にあるレストラン、ニューヨークデリではニューヨーク名物ベーグルのサンドなんてのにもありつける。

ニューヨークに日本食レストラン、ここにはちょっとした詐術が……

しかし、ここにもこれはヘンというものがある。レストラン桜とスタンドのリバティ・ランディング・ダイナーだ。前者は日本食テーブルサービスレストラン、後者はなんとすしロールというちらし寿司とみそ汁(正しくはみそクリームスープ)を販売している。レストラン桜はフィッシュ・マーケットを改装して作った日本人移民のオーナーが経営するレストランという設定。提供する料理はてんぷら定食といった完全なる和食。まあ、魚自体は確かにフルトン・マーケットは魚市場だったので、おかしくない。しかし和食はヘンだ。20年代にそんな店なんか、ない。

つまり、これはこういうことだ。ポートのテーマ自体は20年代のニューヨーク。しかし、現在ニューヨークが寿司やだらけなのは今や有名な話。だからニューヨーク名物は寿司になっているわけで、ということは時代的には完全におかしいのだけれどニューヨークと言うことでおかしくないと言うことになる。まあ、日本人でもニューヨークに行ったことがあるのは、そんなにいない(よくわからないがそれこそ20~30人に一人くらいといったところだろう)、だからニューヨークつながりでいいことにしよう、というかなりお気楽な設定なのだ。

中東もアジアもターバンで統一!

ちなみにオマケをひとつ加えればアラビアン・コーストのレストラン、カスバ・フードコートで出されるものはインド・カレー、そしてナンだ。おいおい、それはアラビアではなくてインドですよ。おそらくこれはターバンつながりだろう。ターバンはインドのシーク教がアタマにつけているモノ。でもわれわれのメディア的なアラビアのスタイルはこのインドのシーク教のターバン姿?(明治キンケイインドカレーのせいだろう、きっと。いやタイガージェットシンかも?)もう滅茶苦茶、インド人もビックリだーっ!えーい、ついでに上げておこう。火山のミステリアスアイランドの中にあるボルケニアン・レストランは中華レストラン。なんで火山と中華ってなことになるのだが、これは火(ハオ)つながりね。

もうこうなるとポートのテーマとひとつでも話がつながりゃなんでもいいということになる。そう、これってディズニーランドがだんだんテーマ性を破壊していくときにやったやり方、つまり串焼きおにぎりや、ラーメンを販売したときのエクスキューズと同じなのだ。

今や理屈付けは「ナンデモアリ」

でもって、もうどうでもいいやって、感じで売っているのがミステリアスアイランドのリフレッシュメント・ステーションで人気の餃子ドッグ。これは餃子の形をした縦長の肉まんなのだが、ミステリアス・アイランドの真ん中においてある映画「海底二万マイル」に登場する潜水艦ノーチラス号と形が似ているからOKなのだ。それからポート・ディスカバリーでの入り口にあるシーサイド・スナックで売っているうきわまん。これもまんじゅうで浮き輪の形をしているのだけれどこれは隣に浮き輪の形をしたアトラクション、アクアトピアがあるからというわけで、ひとつでもつながりがあればナンデモアリというのが、テーマパークのようでテーマパークでなく、テーマパークでなくテーマパークのディズニーシーの特徴と言うことになるだろう。

しかし、この滅茶苦茶解釈はこんなことでは止まらない。2002年の夏だったか(ちょいと記憶がトホホですが)夏休みシーに浴衣で行くと景品がもらえるというイベントがひらかれた。多くのゲストは、おそらくユニクロ製の3500円くらいの浴衣を着てメディトレニアンに繰り出したのだった。「う~ん、もうわか~んな~い」の世界だが、これらのテーマぶっ壊しコンセプトは、なぜか大いにウケ、ディズニーシーのアイデンティティを形成し始めたのである。東京ディズニーランドと東京ディズニーシー。二つは全く別物である。そしてゲストたちの指向性も異なりはじめた。それはランド派とシー派ファンを出現させたのだ。。