ポストモダン、東京ディズニーシーの出現


これって、テーマパーク?

2001年9月ディズニーランドの隣に新しいテーマパーク東京ディズニーシーが誕生する。それはある種異様なテーマパークの出現であった。一言で言えばテーマパークであってそうでなく、テーマパークでなくてテーマパークといったとらえどころがない、それでいて独特な魅力を放つ空間の出現だったのだ。

東京ディズニーシーのコンセプトはもともとはロスの海岸沿いにディズニー社が建設を計画していたもの。ただし実質的にはそちらのコンセプトとはかなり異なっていた。ディズニーシーは海洋博物館や研究センター、そしてテーマパークからなる施設。一方、東京ディズニーシー(以下”シー”)はテーマパークの部分だけ、しかもパーク自体もシーとは少々趣を異にしている。

ちなみに東京ディズニーランドの経営母体であるオリエンタルランド社は第二テーマパークとして、当初、フロリダ、ウォルトディズニーワールド内にある映画のテーマパーク・MGMスタジオと同じものを建設する予定だったが、ハリウッド色濃いこのテーマパークはハリウッド的世界に馴染みの薄い日本人には集客効果が見込めないと判断。そこで実質的にジャパン・オリジナルとなるシーの誕生となった。

分裂病的なテーマパーク

シーはその名の通り海をテーマにしたテーマパークでディズニーランドでは「ランド」に相当する六つのテーマポートから構成されている。と、このように考えると、「ディズニーランド、つまりランド=陸に対してシー=生みのテーマパークというわけか」と思いたくなるのだが、だいぶ様子が異なっている。一言で言えば、ディズニーランドはウルトラ・モダニズムとでもいうべき強迫神経症=フェチ的なテーマ性の徹底によって構築されたモノなのに対し、ディズニーシーはもはやポスト・モダニズム、分裂病/統合失調症的な色彩に満ちた空間が形成されているのだ。

その典型がポートのひとつメディトレニアン・ハーバーだ。これは入り口を入ったところから海を囲んだかなり広いエリアを占めているポートだが、テーマはメディトレニアン=地中海。えっ?地中海って漠然としてるよ、具体的にはどこなの?……。どこでもありません「地中海」です。でも地中海の南岸とか東岸というのは省かれていて、全体の色調はイタリア・ベネチア的風景なのだ。まあ、それに合わせて周辺のレストランではピザやティラミスなんかを販売している。ただし、ここでおかしいのはポップコーンがあっちこっちでいろいろと売られていることだ。ヨーロッパとポップコーンは関係ないはずなのだが、要するにディズニーランドはポップコーンという印象が日本人についてしまったので、こっちのシーにもということだろうか。パーク内では6種類くらいのポップコーンを食べることが出来る。もちろんそれようのプラスチック製・首からぶら下げるバスケットもディズニーランド同様用意されている。

また海側、つまり入り口から入って向かって左にはディズニー・エレクトリック・レイルウエイが見える。これはアメリカの路面電車だよね。さらにさらに中央先には、その先には火山があって、センターオブジアースのライド=コースターが落ちていくのが見える。そして中央のシー=海では昼と夜にディズニーキャラクターが登場するショーが繰り広げられる……完全に滅茶苦茶な風景なのだ。それは地中海でもなんでもなく、強いて言えばディズニー的風景とでも言うべきモノ。ここには取り立ててのテーマ性は感じられないが、このごちゃごちゃ感がかえって妙な雄大さを感じさせ、不思議な高揚をゲストに抱かせるのだ。もう具体的なテーマ性を飛び越えて、ディズニーリテラシーを吸収したモノだけが理解できる抽象的なディズニーというテーマ性とその世界の背景でつねにちらついているヴァーチャルなヨーロッパ的風景(美女と野獣とかシンデレラとか、白雪姫とか、ピーターパンとかとにかくこういうアニメの背後にある「欧州」なイメージ)で彩られているのである。

ディズニー世界のデータベース空間

そう、ここはすべてのテーマを超越した、メタレベルでの”ディズニー世界”が繰り広げられているのだ。しかも、それは単にディズニークラッシック作品の世界と言うだけでなく80年代以降、巨大企業となったディズニーカンパニーのさまざまな事業のイメージすべてがぶちまけられた世界なのだ。言い換えれば、ここはディズニーから、いくらでもディズニー好きが物語を引き出せるデータベースとしての空間が形成されているのである。(続く)