バックパッカーの一般的な情報行動形態


世界最大の安宿街、タイ・バンコク・カオサンを訪れるバックパッカーたちの情報行動について報告している。今回は第二回。メインは第三回以降のスマホの利用状況だが、今回はそれ以外の一般的な旅のスタイルや情報行動についてお伝えする。いわば「バックパッカーの概要」だ。

1基本情報~二極化するバックパッキング(年齢、職業、旅行日数)
バックパッカーは属性、旅のスタイルいずれにしても「二極化」が進行している。

バックパッカーは大都市圏の男性


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・まず男女比率。男性:女性=82.1:17.9。96年の調査が77.9:22.1なので、この割合は基本的に変わっていない。つまり、バックパッキングは男性中心の旅行スタイル。国内居住地域は関東圏で52.5%(東京のみで26.5%)、関西圏で19.3%で、両方を合わせると71.8%、さらにこれに福岡と愛知を加えると81.0%に達する(96年の調査では85.05だった)。要するに、バックパッキングというのは都会的なレジャースタイルの一つということになる。


職業は学生が中心だが、その一方で社会人も


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バックパッカーの職業
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・平均年齢は23.7歳(中央値は22.0歳)。96年調査では21.6歳であったので、平均年齢は上昇。ただし年齢については二極化が進行している。21歳をピークとした山があるが、30歳前後にも小さな山が存在する。前者の山は当然学生が該当する。たとえば19~23歳(全体の55.0%)の87.0%が学生だ。一方、後者の山は会社員やフリーターが該当している。28~32歳(全体の16.1%)の内、無職・フリーターは32.1%、会社員・公務員は42.9%だった。これはバックパッカーたちの職業を調べてみても明らかだ。学生・院生53.6%(96年調査は80.8%)、会社員21.3%(96年調査は4.6%)、無職・フリーター16.9%(96年調査は10.3%)、その他8.2%(96年調査は4.0)。つまり社会人バックパッカーが増加し、これが30代前後で小さな山を作り上げているというわけだ。これは96年に同地区で行った調査と大きく変化を見せた点である。90年代後半、バックパッカーのほとんどは大学生で会社員などの社会人はきわめて少数だった。当然のことだが社会人の滞在期間は短く10日以内の滞在が92.7%を占める。最頻値は一週間。調査時期がお盆を挟んでいるため、これを利用してやって来たことが考えられる。


以外と短い旅行日数。ただし、二極化


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平均旅行日数は42.8日(極値、外れ値を削除)。ただし中央値は15日、最頻値は7日。そして10日以内40.2%、二ヶ月以上20.1%と二極化が進んでいる。二ヶ月以上の滞在者をカットした場合の滞在日数は21.5日となる。その際の中央値は10日となる。二週間以内の滞在が48.9%(一ヶ月以内の滞在が76.6%)なので、その多くは二週間前後の旅行日程とみていいだろう。だが、その一方で二ヶ月以上が19.0%いるので、旅行日程的にも二極化が進んでいる。


バックパッキング初体験が半数

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バックパッキング経験も二極化している。平均は2.5回だが、初体験がなんと49.9%。その一方5回以上が21.3%、8回以上9.3%も。これも二極化だ。ちなみに宿泊先はゲストハウスが88.1%、その一方でホテルやそれ以外(知人宅等)への宿泊が11.9%。これは以前のほとんどがゲストハウスという状況からは多様化を見せていると言える。ゲストハウスのドミトリーとそれ以外の比率は36.4:63.6。ゲストハウスの選択理由は「経済的理由から」が50.3%だった。これは以前と変わっていない。



情報行動~旅先で深く関与するネットとスマホ

情報収集~事前でガイドブックとネット、旅先でガイドブックと口コミ

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旅についての情報行動はどうだろう。まず事前の情報収集で最も利用したものについてはガイドブック47.3%、インターネット34.9%、口コミ16.3%、その他3.3%の順。一方、旅先の情報収集で最も利用したものについてはガイドブック39.6%、口コミ37.9%、インターネット20.9%、その他1.6%。つまり、旅先では口コミが情報収集の手段として非常に重要視されていることがわかる。またインターネットは旅先の方が利用率が低いというのも注目すべき結果と言える。これについては後述する調査結果と連動する(つまり目的性の高まりによって、利便性の低いインターネットへのアクセスはむしろ減少し、手近に入手可能なガイドブック、そして口コミからの情報に頼る割合が増えていく)




持ち込んだメディア~ スマホ・ガイドブック・デジカメが三種の神器

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持ち込んだメディアは多い順にスマホ77.8%、ガイドブック71.2%(96年調査は90.6%)、デジカメ69.6%、辞書44.5%、iPod等38.5%、PC19.8%、iPodTouch17.5%、ガラケー17.0%。スマホ、ガイドブック、デジカメが三種の神器というわけだ。




ネット利用はスマホで

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旅行中でのネット利用率は85.3%。利用者のインターネットアクセス手段は、多い順にスマホ71.0%、持参のPC12.3%、ネットカフェ利用5.8%、ゲストハウス設置のPC5.2%、iPodtouch3.9%、タブレットPC1,3%、そのほか0.6%の順。つまり自前のインターネットディバイス利用率が88.5%(ネット利用者の内スマホ、持参PC、iPodtouch、タブレットPCで接続している利用者の割合)ということになる。これはゲストハウスや一般のカフェ・レストランのWi-Fi接続環境が充実し、これを利用しているためと考えられる。その一方でネットカフェとゲストハウスのPC利用は11%程度。ネカフェ利用はほぼなくなりつつあるというのが現状だ。実際、ここ5年の間にカオサン通りからはネットカフェの姿が消えているのだが、この事実はこういったネット接続手段の変容を示しているとみていい。ようするにスマホを携帯し、もっぱらWi-Fi環境でネット環境に接続するという利用が一般的な形態となっていると考えられる(スマホは海外ではほとんどのバックパッカーがローミングサービスを料金が高額なために利用していない。それゆえ、スマホはほとんどiPodtouchと同じものになる)。

というわけで、次回はスマホの利用状況についての詳細についてお知らせする。(続く)