第一象限:情報アクセス-インストゥルメンタル志向の旅行者
バックパッカーの聖地、タイ・バンコク・カオサン地区でバックパッカーのメディア行動(スマホ、Facebook)についてのインタビューを特集している。さて、いよいよ今回から、実際のインタビューをお送りしよう。本特集で示しておいたように、インタビューイー(インタビューを受けたバックパッカー)を情報アクセス志向ーコンサマトリー志向、インストゥルメンタルーコンサマトリーによるマトリックスによって四分類しているが、今回は第一象限:情報アクセス志向-インストゥルメンタル志向のバックパッカーについてお伝えする。
スマホ,Facebookは旅の情報を引き出す道具だけれど……
Mikiさん(東京在住)は現在29歳。海外旅行10回、その内バックパッキングは4回め。今回は職を辞め 11ヶ月の旅を敢行。その最終章として二週間の予定でタイにやってきた。これまで三回のバックパッキング経験があるが、長期にわたるバックパッキングは今回が初めてだ。ドミトリーを渡り歩きながら情報入手をし、旅するのが、彼女の旅のスタイルそんな。彼女にとってFacebookは自らの旅行を活性化するツール。というか、もっぱらFacebookは旅の重要な道具として機能している。

Facebook、国内では「旅のスタンバイ」ツール
先ず日本国内にいるときには、海外を旅行している友達たちの動向をチェックする。そうすることで、日本にいても、海外旅行にいる気分に浸る。さながら安宿街にあるゲストハウスのドミトリーでバックパッカーたちが語り合う場面にヴァーチャルな形で居合わせたような気分に毎日浸れるのがFacebookなのだ。だが、その反面、日本にいるときには自らが「近況アップデート」をすることはほとんどない。その頻度は,なんと一ヶ月に一回あるかないか。要するに、徹底したROM専なのだ。国内でのFacebookは、いわば「旅のスタンバイ」「日本にいても旅」のためのツール。つまり日本でFacebookは第二象限:情報アクセス志向ーコンサマトリー志向のメディアとみなされている。
海外では、情報入手のクローラー
だが、海外に出た瞬間、その利用方法は一変する。Facebookは情報を入手するツールとして機能し始めるのだ。まずはFacebookの閲覧頻度。日本では一週間に2~3回程度だったのが、旅行先では1日2回程度と増加する。これは、自分が向かう旅の情報を獲得しようとするのが目的。具体的にはFacebookをチェックして自分が向かう先の情報を持っている友達にアクセスする。そのために「近況アップデート」や「いいね!」ボタンを押す回数もやや増える。Facebookの友達申請と承認については二週間で、それぞれ3人、6人だった!(ただし、すべて実際に面識があった人間だけ。また情報公開はメルアドと生年月日のみ)。コミュニケーションを活性化することで情報を得やすくするのが目的なのだ(ちなみに「いいね!」ボタンを押す最も顕著な理由は「あいさつ程度」)。要するに、旅に関してのFacebookの利用は徹底した第一象限:情報アクセスーインストゥルメンタル指向なのだ。「Facebookを利用するのは旅の情報が得られるから」彼女はきっぱりと言う。
データベースとしてのFacebookの写真機能利用
ただし、Facebookの機能の使い方については、ちょっと変わった側面もある。彼女は写真撮影や自分の近況をあまりFacebookにはアップしない。これには理由がある。Facebookとバッティングする機能を備えるメディアがあり、こちらの方が前からやっていて馴染んでいるのでFacebookに移行しないのだ。
先ず写真。ネット上にアップする場合には、カメラ撮影→SDカード→パソコン→アップという面倒くさい作業をやっている。しかし、彼女はこのスタイルを好んでいる。 これは一眼レフに凝っていてスマホのカメラに不満なため。だから、あまりカメラ機能は使わない。 とはいうものの全くFacebookに写真をアップしないわけでもない。この面倒くさい手続きがやれない場合にはFacebookにとりあえずアップするという位置づけで、スマホのカメラ機能を利用してFacebookの写真アップが行われる。要するにデータベースとしてFacebookの写真機能を利用していると言うことで、これも第一象限になる。
ブログで第四象限:コミュニケーションーインストゥルメンタル志向的な連絡機能を利用
また、写真をフェイスブックにアップしない理由は他にもある。ブログを開設していて、そちらの方に写真をアップするからだ。で、ブログについてはFacebookでの「近況アップデート」の頻度の問題とも深く関係している。国内にいるときよりはやや増えこそするが、やはりあまり多くない。これは、近況の報告についてはブログを利用しているから。言い換えれば彼女のブログ作成の理由は一時代古い感覚のものだ(この詳細については本ブログ「ブログはどう使われているか1~4」を参照。http://blogs.yahoo.co.jp/mediakatsuya/archive/2012/8/14)。広く一般に向けて情報を発信するのではなく、身内に、自らの存在をお知らせするのがその目的だからだ。つまり、はじめから多くの不特定多数の人間を読者対象にしているわけではない。これは、現在Facebookユーザーの多くがやっていることだが、彼女にとっては未だにブログで行われていることを意味している。言い換えればブログの使い方は第四象限:コミュニケーション-インストゥルメンタル志向なのだ。
彼女の第一象限、とりわけインストゥルメンタル志向的の強いメディアの使い方から、どんなことが考えられるんだろうか?次回は、彼女のメディアの使い方について分析してみよう。(続く)