僕の講義(メディア社会論)を受講している学生たちのスマホの利用形態アンケート結果についてお伝えしている。
Wi-Fiを知らない?
最後に、スマホをどういった環境で使用しているかについても聞いてみた。スマホと言えばWi-Fi環境の上手な使い方が、その効率性、利便性をアップさせるということについては異論はないだろう。Wi-Fi環境ならパケット代を気にする必要はないし(まあパケットし放題にしてあれば関係はないけれど)、スピードも速い。だから、当然ながらスマホを頻繁にWi-Fiに接続していると行ったことが想定されたのだけれど……結果は逆だった。Wi-Fi利用率は48.8%。なんと半分以上のユーザーがWi-Fi環境を利用していないのだ。そして接続しているユーザーのWi-Fiの使い方もきわめて限定されている。利用者がWi-Fiを最も使う環境が家庭で74.6%、大学19.3%、公共の無料Wi-Fiスポット32,6%、有料Wi-Fiスポット4.6%といった具合。つまりWi-Fi環境というのは原則家庭内ということになる。奇妙なのは大学での利用率。キャンパス内にはWi-Fi環境が整備されていて、学生には利用するためのアカウントが割り当てられているのにもかかわらずこの数値なのだ。中にはキャンパス内にWi-Fiが飛んでいることを知らない学生もかなりいた。で、もっとすごいのはWi-Fiの意味を知らない学生すらいたこと。もっともウチの大学のWi-Fiが強くないのでプチプチ切れ、再び接続する際にIDとパスワードをきいてくるという、オマヌケなシステムであることも問題なのだけれど(^◇^;)。
またスマートフォンとパソコンのデータ共有=同期率についても、かなり興味深い結果が出ている。同期はスマホが故障などでデータを消失してしまったり、スマホ自体を紛失してしまった才のバックアップとして欠かせない機能。しかし共有率は34.1%で、全体の三分の二がスマホをスタンドアローンで使用しているのだ。なくしたら、どうするんだろう?
つまりスマホって?
さて、今回の調査を総括しよう。僕の大学の講義受講生からスマホの利用について考えられることは1.様々な機能の利用率アップ、2.牧歌的な使用法、3. コンサマトリー(消費)的な利用の三つだ。
まず、一つ目。とにかくあらゆる機能の利用頻度が上がる。これは、要するにコンピューターがウエアラブルになり、なおかつものすごく簡単になったことで各機能に積極的にアクセスするようになったことを示唆している。いいかえれば、ユーザーインターフェイスの問題といっていい。パソコン普及の歴史はまさにこのユーザビリティの歴史だった。つまり、どうやって一般の人間が、これをさながら家電のように使いこなせるようになるか。そして、その一つの到達点がスマホということになる。ITリテラシーの高くない高齢者、そして女性までもがスマホに職種が伸びるというのは、ユーザビリティがある程度の熟成を見たからだとみなしてもいい。
ただし、調査報告の最後に示した学生たちの意外な使い方、つまりWi-Fiの利用率があまり高くなく、利用していたとしても家庭内が中心であること、そしてデータ共有を三分の二がやっていないという牧歌的な使い方は、ユーザビリティがまだまだ頂点に達しているのではないことを物語ってもいる。だから、ユーザビリティを高めていくという課題はまだまだ残っている。たとえばWi-Fiならば、これがあちこちに偏在するようになり、ほとんど無料で接続可能になるようになって、ユーザーがWi-Fiのことなど気にしなくてもいいような環境を作り出す必要があるし、データ共有もスマホ=キャリア側が自動的に行うといった環境を整備する必要がある(もちろんプライバシーのことを十分踏まえつつということになるけれど)。
そして、最後の三つ目、コンサマトリーな側面だけれど、実は単に便利と言うことよりも、こちらこそがスマホの魅力の大きな側面、あるいは人々に購入を促すメディア性なのかもしれない。パソコンやガラケーに比べれば、スマホは格段に遊べる、ヒマつぶしができるツールなのだ。アプリで利用されているトップがSNS、ついでゲームというのはこれを物語る。つまり、この二つはとっても遊べる、コンサマトリーなツールだからだ。このハマり具合は、ガラケーでは、ちょっと得られないものではないだろうか。「これからもスマートフォンを使おうと思うか」という質問に対する肯定的な回答は92.1%、ガラケー所有者で「将来的にスマートフォンを使ってみたい」と応えたものは71.0%だった。
どうやら、世界がスマホで埋め尽くされるのは時間の問題のようだ。