『見た!』と『ミタ』
ちょいと古い話で恐縮だが、昨年放送された松嶋菜々子主演の『家政婦のミタ』(以下『ミタ』が最終回で視聴率40.7%を稼ぐという、視聴率低下の時代に画期的な成績を上げたことは記憶に新しい。
さて、このドラマが、市原悦子主演の人気シリーズ『家政婦は見た!』(以下『見た!』のタイトルをなぞったものであるのは、どなたもご存知だろう。二つの作品は家政婦としての主人公が家庭に派遣されることで様々なドラマが展開するという点で共通するスタイルを持っている。後発の『ミタ』は、先発の『見た!』の威光を借りているというわけだ。しかし、この二つの作品、タイトルと形式が同じなだけで、その内容、そしてパースペクティブは全く異なっている、というか全く逆だ。
ポスターから作品の違いをさぐる
そこで今回は二つの作品の違いを考えてみたい。ただし、その違いを分析するにあたってドラマそれ自体には立ち入らない。今回取り上げてみたいのはポスターだ。に作品のポスターを比較することで、その作品の質的相違をここから見いだしていく。というのも『ミタ』のポスターは『見た!』のポスターの作風を踏襲しながら、全く違いメッセージを発しており、それを『見た!』との比較させることによって見事に作風を示しているからだ。
先ず、違いを確認
二つのポスターを見て欲しい。市原と松嶋扉の後ろから身体の左側を隠すかたちで立っているという構図は全く同じだ。だから後発の『ミタ』が先発の『見た!』のそれをパクっていることが容易にわかる。ちなみに松嶋の左にはライトが映っているが『見た!』の方も左にパーテーションが置かれている(残念ながら、このポスターではちらっとしか見えないが)。
だが、構図は全く同じでありながら、そこに置かれたパーツや色、2人の撮影方法の違いを見ていくと、この二つが発しているメッセージが全く異なるものであることがわかってくる。じゃあ、違っているところを確認しておこう。
1.2人の背景:市原は後ろが真っ暗。一方、松嶋は白。
2.身体の左側を隠すもの:市原は扉か壁で隠れた部分は全く見えない。一方松嶋は扉だがガラス貼りなので左肩がシルエットで見える。
3.身体の写し方:市原はバストアップ、松嶋は全身。
4.手の位置:市原は壁(扉?)に手をかけている。松嶋は扉の取っ手に手を置いている。
5.目線:市原は真っ直ぐこちらを見つめている。松嶋の目線は今ひとつその方向がはっきりしない。ぼんやりとしているようにも見える。
6.タイトル:ポイントは「みた」の部分。前者は「見た」という感じに「!」。後者は「ミタ」とカタカナ。
7.タイトルの一:『見た!』は市原の向かって左、暗闇の前。『ミタ』は松嶋の向かって右、ドアの前。
こういった、相違点。実は、全て一つのメッセージに向けてなされている演出なのだ。では、それはどういったものなのだろうか?(続く)