
情報行動とメディア利用
今回は、バックパッカー、つまり航空チケットのみを購入し、海外をホテルの予約などなく、宿泊日数も比較的長期で、滞在地を自由に旅する旅行者の情報行動について統計的に考えてみたい。世界で最も多くバックパッカーが投宿すると呼ばれているタイ・バンコク・カオサン地区での日本人へのアンケートとインタビュー調査を行った。調査期間は2011年8月4~19日。質問紙調査については、現地滞在中の日本人への留置法による。回収票総数116票。今回の調査の焦点はバックパッカーの情報行動、とりわけ電子メディアの発展に伴って出現したインターネットとこれにアクセスするメディア(携帯電話、パソコン、スマートフォン、タブレットPC、パソコン等)の使いこなし状況の把握に置いている。バックパッカーの基本属性:旅行者の高齢化、多様化
はじめに、バックパッカーの基本的属性について押さえておこう。その際、以前との変化を見るために96年3月に同地区で報告者が実施した調査結果(回収票数312票)と比較することにする。旅行者の性別は 男:75.0%、女:25.0%。これは96年の調査結果とほぼ同じ(男77.9%、女22. 1%)。バックパッキングの経験数は、初めて:81.0%、2回目:10.3%、3回以上:8.7%で平均回数は1.4回。96年が3.1回だったことを考えると、初心者が増加していることがわかる。また国内の居住地は関東:50.0%、近畿30.2%、東海北陸:9.5%、北海道:3.4%、中国:3.4%、九州・沖縄:1.7%。96年は関東61.5%、近畿23.5%、その他15.0%で、やはりバックパッキングという旅スタイルが大都市圏の若者に偏重傾向があることについては変化がない。
年齢層的には10代:7.8%、20代:76.5%、30代:11.3%、40代:2.6%、50代以上11.7%。96年調査時には、旅行者の平均年齢は21.7歳。今回は質問項目が十歳区切りであったため、平均年齢は明らかでないが、やはり20代が中心であることがわかる。ただし、旅行者の属性を踏まえると年齢層が高齢化していることが予想される。属性は学生:44.7%、会社員:26.3%、無職・フリーター:15.8%、その他:13.2%。一方、96年は学生80.8%、無職10.0%、会社員4.6%であり、学生の減少、会社員の増加という傾向が見られるからだ。そして、こういったバックパッカーの高年齢化を示唆するもう一つの指標として、滞在期間があげられる。滞在期間は5日以内:15.0%、6~10日:27.4%、11~15日:11.5%、16~20日:8.8%、21~25日:5.3%、26日~1ヶ月:5.3%、1ヶ月~2ヶ月:7.0%、2ヶ月以上~1年:5.3%、1年以上:8.9%、その他:5.3%。一方、96年の平均滞在日数は14.2日だった。15日以内が53.9%、一ヶ月以内が73.5%を占めるということを考えると、旅行日数はあまり変動がないと見てよいのかも知れないが、その一方で五日以内が15.0%というのは特筆すべきデータと言える。これはもはやバックパッキングと表現するのが妥当かどうか微妙な日数だ。想定されるのは、会社員が短期の休暇を利用してバックパッキングにやってくるといった状況だろう。旅の情報入手:事前にインターネット;旅先ではガイドブックを利用
次に旅の情報入手について。これについては事前の収集および旅行中の収集手段について調査を行った。事前の旅の情報収集については「した」:73.2%、「しない」:26.8%。「した」と回答した者のうち、その情報の入手先についてはインターネット:59.2%、ガイドブック:34.2%、口コミ:5.3%、その他:1.3%という割合であった。ただし旅行中の情報入手先となるとガイドブック:40.6%、インターネット33.7%、口コミ:24.8%と、インターネットとガイドブックの割合が逆転する。つまり旅行者は旅に出かける前にはネットで、現地ではガイドブックでという行動パターン傾向が見られる。ちなみにガイドブックの所持率は82.9%で、96年の90.6%に比べると7.7ポイントの減少が見られる。このことは①ガイドブックが依然として旅の必須アイテムであること、その一方で②ガイドブック以外にも旅情報へのアクセスの手段が出現していることを示していると考えられる。
どうやら、バックパッカーたちにとって情報入手の手段としてかなりインターネットは重要になっているようだ。じゃあ、具体的にはどうなっているんだろうか?(続く)