
アップルのクラウド・サービス”iCloud”

WWDCでiCloudの九つのサービスをプレゼンするS.ジョブス
クラウド・コンピューティングとは
”Appleが次期発売予定のMacBook Airで目論んでいるのはパソコンからハードディスク(以下HDD)を撤廃し、HDDの時代に終止符を打つこと。その決定打を打つために、現在発売を見合わせている。”
こんな前提でパソコン(この場合はノートパソコン)の未来について考えている。では、なぜ発売を見合わせているのか?それはMacBook Airが(というか、MacBook Airを含めた既存のアップル製品の全てが)iCloudという、OS X Lionと同時リリースされるシステム(無料)と接続することで、その機能を飛躍的にアップさせ、アップルがこれまでやってきたような電子メディアの次のブレーク・スルーを切り開こうとしているからだ。
iCloudとは、クラウド・コンピューティング・サービス(以下、クラウド)の一つ。とは言っても、これじゃあクラウドの意味がわからないので何を言っているのか解らない。
クラウドとはネット上にサーバーを置き、そこにユーザーがデータなどを置くことが出来るサービスだ。やや誤解を招きかねないが、最もあっさり説明してしまうと「インターネット上でのハードディスク・スペース提供サービス」ということになるだろうか。ユーザーがWi-Fiなどのインターネットに接続可能な環境で、いつでもこの「雲の上のハードディスク」にアクセスできるようになる。すでにDropBox、SkyDriveといったクラウドがあり、これらはある程度までは無料でこのサービスを受けることが出来る(一般的には使用する容量が増加すると有料になる)。
ただし、これらは現状では自前のハードディスクのサブ的なストレージとしての使用が中心だ。というのも、これらは使い勝手があまりよくないからだ。事実、現在AppleもMobileMeというクラウド・サービスを行っているが、評判がいいとはいえないし(有料!年間$99)、実際あまり定着していない。問題は「面倒くさい」こと。一定のインターバルをおきながら、任意にその都度データをクラウド上にアップする作業というのが、実は一番のネックなのだ。ユーザーは常にその存在を意識しなければならないからだ。
iCloudとは
この「面倒くささ」を解消するのがiCloudだ。iCloudは九つの機能からなる。アドレス帳、カレンダー、メール、AppStore、iBook、アプリのバックアップ、書類管理、フォトストリーム、そしてiTunesだ。これらがクラウド上に置かれ、同じアカウントのマシーンに最大10台まで接続され、データが自動的に同期する。マックで作成したアドレス、カレンダー、メール、写真、アプリ、書類が他のマックやiPhoneやiPadに自動的に転送されるのだ(もちろんその逆も自動で同期)。たとえばiBook(iPhone、iPad、Macで電子書籍を購入、保存するアプリ)ならiPadで電子書籍を購入し、途中まで読んだところでブックマークしておいて、その続きをiPhoneやマックでブックマークを探して読むといたことが出来る。もちろん、このときユーザーは他のマシンに書籍を同期する作業をしてはいない。全てはiCloudが自動で行うのだ。つまり購入した本がこれら全てのマシンに自動的にインストールされ、しかもブックマークも付けられている。こういったクラウドを利用した手軽な同期によってブレイクしたサービスにはEvernoteがあるが、ここまで様々な機能の自動同期を手がけたものはない。 使用料金は、なんと無料!(もちろん、Apple製品を購入しなければならないけれど)。ちなみにMobleMeはiCloudの出現と平行してフェイドアウトする予定になっている。
さてこのiCloudがHDDのパソコンからの追放とどう絡んでくるのか……(続く)