(チラムでマリファナを喫煙する日本人)
ヒッピーとドラッグ
ヒッピーのライフスタイルの一つとして必ず取り上げられるのがドラッグの摂取だ。このことはサンタナ・ロッジでも例外ではなかった。摂取されていたのはマリファナ、オピウム(阿片)、そしてLSD。マリファナはガンジャ(同じ言葉だが、ここではマリファナを乾燥したものを、こう呼んでおく)か、ガンジャにハシシ(マリファナを樹脂化したもの)を混ぜてチラム(マリファナ専用のキセル)で喫煙するというのが一般的だった。またマリファナをジュースやラッシー(ヨーグルト)に混ぜ、ミキサーにかけての飲むバング・ジュース、バング・ラッシーという摂取の仕方もあった。マリファナとオピウムは近くのガバメントショップで販売されており、簡単に手に入れることが出来たが、LSDは主にネパール・カトマンズのジョッチェン地区あたり(当時、安宿が多くあったところ)やポカラで仕入れて持ち込んだものだった。
実はほとんど初心者
マリファナとオピウムに関しては簡単に入手できるとはいうものの、一般のインド人がこれを摂取することはないし、これをやっている人間はやはり悪い印象を持たれる(また、彼らにはマリファナを購入するような経済的余裕もなかった)。もちろんサンタナもやらないし、客に販売すると言うこともない。ただし、ヒッピーたちはあたりまえのようにやっていた。とはいうものの、そのほとんどは初心者。つまりインドに来たらドラッグは試してみるものという感じでやってくる。当然、これを自国に持ち帰ろうとか、まして況んやドラッグで商売をやろうという人間はいない。だからやり方が結構素人っぽいと言うか、マリファナ程度で大騒ぎするという無邪気なものだったという。
もっともこの無邪気さは困りものでもある。販売していると言うことは合法(実は販売こそしているが、オリッサ州でもこれらドラッグは違法。バックパッカーたちの間に言われていた「オリッサでは合法なのでドラッグを堂々とやれる」というのは風説だった)と考え、その辺でおおっぴらにやっては騒いでいた。また慣れないゆえ、摂取の仕方がわからず、LSD摂取時には、しばしばバッド・トリップに陥り、周囲に迷惑をかけることもあったらしい。
当然、こういう風景を住民はいやがった。そこでサンタナは彼らに約束を取り付ける。それは「ドラッグをやってもかまわないが、必ずサンタナの部屋の中でやること」。そして、これをヒッピーたちはキッチリと守ったのだった。(続く)