(エリーが作成したMy Adventure Book。そこには意外なメッセージが(映画『カールじいさんの空飛ぶ家』より)
なんとかマンツの下から逃げ切ることができたカール、ラッセル、ケビン、そしてダグ。しかしダグの犬語翻訳機にはGPS機能が装着されていたため、その居場所は容易にマンツの知れところとなり、やがて追っ手がやってきて巨大鳥ケヴィンはマンツによって捕獲された。これを取り返すべくカールは家を使ってマンツの飛行船に接近しようとするが、このことを予期してマンツはカールの家の風船の多くを破裂させてしまう。
もはや飛行船に近づく手段、つまりケヴィンを助ける方法はなくなってしまったのか?カールは意気消沈する。しかしケヴィンを助けたい一心のラッセルはひるまない。なんと自分のカラダに風船を巻き付けファンを推進機にしてマンツの飛行船へと単独向かってしまったのだ。
一人家に取り残されたカール。居間の椅子に座ってしばし呆然とするが……するとそこにアルバムが一冊。これはエリーが”My Adventure Book”と名付けたもの。カールがエリーと初めて家の中で出会ったときに見せられたものだ。もっとも、当時はパラダイス・フォールの絵(エリーが図書館の本をちぎって持ってきたもの)が貼り付けてあるだけだった。ただし、これはエリーの夢、そして秘密。その秘密をカールは見てしまったがゆえに、カールはエリーをパラダイス・フォールへと連れて行くことを無理矢理約束させられ、そして二人は結ばれたのだった。
しかし、結婚後、このアルバムはパラダイス・フォールへの冒険日記どころか、二人のこの家での日常生活の記念アルバムになっていた。一見すると冒険とはほど遠い展開が綴られている。言い換えれば、冒頭十分間のエピソードのダイジェストが貼り付けられていたものだったのだが……一番最後の写真が貼り付けられたページの次のページを、ふと開いたとき、カールは驚くものを発見する。それはエリーからのメッセージだった。
「楽しい日々をありがとう。さあ、次の冒険に出発して!」
えっ?次の冒険って?まだはじめの冒険すら始まっていないのに?なぜ?
奇っ怪な行動を始めたカール
しかし、そのメッセージを見た瞬間、カールは、家の中にあるエリーとの思い出の家具を次々と投げ捨て始めた。なぜ彼はこれまであんなに大事にしてきたこれらのものを惜しげもなくバンバンと捨ててしまったのか?もちろん表向きは家を軽量化するためだ。つまり、家具を捨てれば家の重量が減る。そうすれば少なくなった風船でも家は浮き上がり、マンツの飛行船へたどり着き、ケヴィンの救出を試みることができるからだ。つまりこの時、冒険はパラダイス・フォールへ行くことからケヴィンを救出することに変更されたのである。だが、この行為にはもっと大きな意味がある。そう、カールはこの瞬間、「本当の冒険」とは何なのかを理解したのだ。そしてそのことを教えてくれたのがラッセルとマンツだった。前者は見習うべき冒険家として、後者は否定すべき冒険家として。それは何か?(続く)