嗜壁化し続ける、エレクトリック・マイルス
のっけから個人的なエピソ-ドで恐縮だが、ジャズ界の帝王と呼ばれるマイルス・デイビスを聴き始めてから、はや三十数年が経つ。マイルスといえばファンの多くが、その代表作とかお気に入りとして*Kind of Blue*や*Birth of Cool*あるいは*My funny Valentine*あたりをあげる。しかし、僕にとっての代表作は、いわゆる「エレクトリック・マイルス」と呼ばれる60年代末から70年代前半までの一連の作品だ。こうなってしまった理由は、初めて聴いたマイルスがたまたまエレクトリックものだったからだ。中学二年の時、オ-ディオ・マニア(当時はオ-ディオブ-ムだった)の兄がいる友人の家にいって、その兄が聴いていたレコ-ドをコピ-させてもらったのだが、それが*Get Up with it*というこの時期のアルバムだった。
当時、ジャズといえばサッチモとかデュ-ク・エリントン、ディキシ-ランド・ジャズみたいなもんだとしか思っていなかった僕にとっては、この何ともいえぬ音楽に首をかしげながらもとにかく一生懸命耳を傾けたのだった。このアルバム、なんとマイルスはオルガンを中心に弾いているというとんでもないアルバム。で二枚を聴いてもひたすらいうならば電気音で「チャカポコ」(ジャズ評論家の悠雅彦がこう表現していたと思う)としか聞こえない音。しかも二枚組。ちなみにマイルスがトランペッタ-であること以外、ほとんど知識がない状態でこれを聴いたのだが、とにかく知ったかぶりで聴いていた。
しかしである。これがトラウマになったというか、その後も延々このアルバムを聴き続け。レコ-ドを購入しCDも購入しということになり、しかも、これと関連するエレクトリック・マイルスを次ぎ次ぐとコレクションし(つまりビッチズ・ブリュ-、オンザ・コ-ナ-、アガルタ、パンゲアなど)、結局……気がつくと三十数年聴きっぱなし。ちなみに未だによくわからんというか、悪趣味としか思えないサウンドだとは思うのだが(絶対BGMとしては聴けません)、とにかくやめられない状態がず~っと続いているのである。で、どうやら自分と同じようにエレクトリック・マイルス中毒に陥っているリスナ-、結構多いらしい。
そこで、今回はこれをチョイ、分析してみたいと思う。(続く)