焼き餃子協会の集計によると2021年、年間餃子購入額と購入頻度において宮崎市が全国第一位になった。
まさに異変。県別餃子消費量ランキングといえばトップの座をめぐって宇都宮と浜松が鎬を削ってきたというのが、これまでの図式。宮崎も上位にはあったが、その存在は全国的に知られはていなかった。インターネットの時代、ご当地名物は全国に誇れる、そして経済を活性化のための重要な資源。それは餃子も例外ではない。宮崎という伏兵の出現、意外や意外という感じで浜松、宇都宮はさぞや驚いたことだろう。そして、宮崎人は大喜びしているだろう。
ただし、である。宇都宮と浜松に忠告したい。
「慌てることはない」
そして宮崎にも忠告しよう。
「三日天下かも?」
実は宮崎が全国一になった理由は「市民が頑張って食べた」ということの他に、もっと大きな理由がある。それは「コロナのせい」。え?それはどいういうこと?
焼き餃子協会の統計は単純に購入額と購入頻度を計算しただけのもの。どのように餃子が消費されるのかについては踏み込んではいない。で、宮崎の場合、消費の仕方が他とは全く異なっているのだ。
宇都宮や浜松の街中を歩いてみれば、餃子専門店を見かけることは珍しいことではない。また街中華の店でもお客の多くがサイドオーダー(あるいはメインオーダー)として餃子を注文する光景も日常的。一方、宮崎の場合、餃子専門店の数は少ない。自分は宮崎に10年居住していたが、餃子専門店の暖簾をくぐることはほとんどなかった。つまり、観光客は「宮崎だから餃子を食べに行こう!」と思ったところで、店を探すのは容易なことではない。むしろ、もも焼き、チキン南蛮、宮崎牛、そして宮崎ラーメンといった名物を扱う店に向かうのが一般的なのだ(というか圧倒的に多い)。
では、このからくりは何か。答えは実に簡単で、みやざき人にとって餃子は「持ち帰るもの」とりわけ「冷凍物を大量買いするもの」。だから、こうなったのだ。一例を示そう。宮崎で最も有名な餃子の店は「ぎょうざの丸岡」だ(これ自体は本店が都城にあるのだが)。かつて丸岡は宮崎市内駅北の原ノ前・大島通船沿いに餃子レストランをオープンしたことがある。この辺りは他に有名なラーメン屋や回転寿司、もも焼きの店などがある、ちょっとしたレストラン街。ところが、丸岡は長続きしなかった。言うまでもなく「餃子は店で食べるものではなく、冷凍を購入して、家で焼いて食べる」からだ(現在はもう少し南の柳丸に販売のみの店を構えている)。
さて、こうした餃子消費方法の違いを踏まえれば、宮崎が一位になったことは十分に納得がいく。コロナ禍の中で巣ごもり需要が高まった。ならば外食するより家で食べるという普段のスタイルに拍車がかかる。
「じゃあ、餃子かな?」
それが結果として消費量を押し上げた。
一方、宇都宮や浜松はその逆である。持ち帰り文化ももちろんあるが、餃子専門店や街中華での需要も高い。だが、コロナ禍によって後者の需要が激減してしまった。そこで宮崎が浮上した!
ということは、ポストコロナ後には、必然的に宇都宮、浜松の逆襲が想定されるだろう。ジモティは再び餃子を食べに外に出かけていく。一方、宮崎の場合、そうした文化はほとんどない、そして巣ごもり需要も減退する。ということで、今回の宮崎の餃子全国第一位。三日天下の可能性が高い。
宮崎に長年お世話になった者の一人として、宮崎市民に檄を飛ばしておこう。「勝って兜の緒を締めよ!」。そして、現在の餃子天下は自助努力ではなく、半分はコロナのせいであることをお忘れなく。
というわけで、宮崎の皆さん、せっせと餃子を食べてましょう(笑)。また、「冷凍餃子をお家で楽しむ」という「みやざき文化」を全国に広げてください(柚子胡椒、独自のタレ、醤油、七味、しそ、味噌など色々な調味料で味付けして楽しむなんてことをやってます。美味しい)。
で、そろそろ大手の冷凍食品会社(味の素とか)が宮崎餃子に手を伸ばそうとしているんじゃないんだろか(宮崎辛麺は明星がすでに本田翼を起用して売ってます)。
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